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2018年04月04日

仮想通貨業界に大手参入、信頼回復の道は?

通信・インターネット関連

 仮想通貨交換業者コインチェックをネット証券のマネックスグループが買収する検討をしていることが明らかになりました。コインチェックは1月に仮想通貨の不正流出問題を起こしており、経営再建のための支援先を探していました。金融庁は、仮想通貨交換業界が抱えている不正流出やマネーロンダリングなどの問題の解決にめどをつけることを優先し、新規参入をすぐに認める姿勢をとっていません。このため、参入意欲と資本力のある企業は、すでに金融庁に認められている交換業者を買収したり資本参加したりしようとしています。一方で、管理体制が十分でない業者は市場から撤退を迫られています。これまではベンチャー企業ばかりだった業界ですが、大きな金融グループやITグループが参入して業界を変えようとしています。それによって仮想通貨業界が信頼を取り戻して再拡大を始められるかどうかは、まだ不透明です。

(画像は、ネット証券「マネックス」の公式サイト)

登録業者とみなし業者で32社

 2017年4月に改正資金決済法が施行され、金融庁による仮想通貨交換業界の規制と育成が始まりました。交換業ができるのは、金融庁に登録された「登録業者」と施行前から営業していて登録申請中の「みなし業者」だけです。現在、登録業者、みなし業者はそれぞれ16社あります。580億円相当の仮想通貨が流出したコインチェック事件のあと、金融庁はこうした業者に立ち入り検査をし、ずさんな管理をしている業者には業務停止命令や業務改善命令を出すことにしています。業務を継続することができないと判断した業者は撤退の道を選ぶことになります。

(写真は、巨額の不正流出事件を起こしたコインチェック社が入ったビル)

100社以上が登録に列

 ただ、業界の将来性を期待する見方は依然根強いものがあります。民間情報会社の試算では世界にある仮想通貨の時価総額は約2600億ドル(約27兆円)に上ります。送金コストの安さなどのメリットは大きく、市場はもっと大きくなる可能性があります。こうしたことから交換業界に参入しようとするところは多く、100社を超える企業が金融庁への登録のために列を作っている状態です。

(図版は、主な仮想通貨の名前と時価総額)

ヤフー、サイバーエージェント、LINE

 とはいえ、金融庁は今のところ業界をしっかり監督することに重きを置いており、すぐに登録を認めようとはしていません。行列に並んで順番を待っていると、参入はいつのことになるかわからない状況です。このため、マネックスはすでにみなし業者になっているコインチェックを買収する道を選ぼうとしています。ほかにも、ヤフーグループは、登録業者のビットアルゴ取引所東京に資本参加を検討しています。さらにサイバーエージェントやLINEも参入の意向を示しており、登録業者やみなし業者の買収や資本参加という形で参入するのではないかとみられています。

ブロックチェーンの可能性にらむ

 仮想通貨については、先行きはまだ不透明です。送金コストが安いとか使い勝手がいいとかのメリットがあるため、国の信用を背景にしたドルなどの既存通貨にとって代わると予想する人もいれば、値動きが激しいため実際に使うお金にはなりえず、マネーゲームの道具として終わるという見方もあります。ただ、仮想通貨の基本技術であるブロックチェーンは信頼性を得るための大変優れた技術だということは大方が一致するところで、様々な分野で応用できるとみられています。大きな金融グループやIT企業が今のうちに首を突っ込んでおこうとしているのも、広い分野でのブロックチェーンの可能性を考えているからでしょう。

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