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2017年11月22日

ミニストップ、成人誌販売中止 コンビニの公共性と独自性

流通

 イオングループのコンビニエンスストア「ミニストップ」が、来年1月から成人向け雑誌の取り扱いをやめると発表しました。本社がある千葉市では、先行して今年12月1日から取りやめます。かつては若い男性が客層の中心だったコンビニですが、今やコンビニはものを買うだけでなく、役所、金融機関、オフィスなどの機能の一部も肩代わりする公共性のある社会インフラになっています。客層も老若男女に広がっています。そうした状況の下、女性客などから成人向け雑誌が陳列されていることに不快感が表明されてきました。ミニストップの決断はこうした公共性を重視したもののようです。一方で、コンビニ業界4位のミニストップは大手3社との違いを出そうとしたという見方もあります。

(写真は、東京・千代田区のミニストップの店頭です)

千葉市の取り組みに共感

 ミニストップの決断を促したのは、千葉市が今年2月、陳列棚の成人雑誌に不透明なフィルムを巻いて、表紙の一部を隠す取り組みを行おうとしたことです。コンビニ各社は検討の結果、作業負担が大きいことや売り上げが減る心配から難色を示し、千葉市は取り組みを断念しました。ただ、千葉市に本社を置くミニストップは千葉市の考え方に共感し、取り扱い自体をやめることにしたのです。

(写真は、千葉市役所で記者会見したミニストップの藤本明裕社長=左と、熊谷俊人・千葉市長=2017年11月21日撮影)

売り上げにつながる

 コンビニが成人向け雑誌を陳列することについては、以前から議論がありました。女性や家族連れからは「やめてほしい」という声が出ていましたが、コンビニ側は「成人雑誌は単価が高い」「出版物なので返品リスクがない」「長い期間置いておける」「成人雑誌目当ての客のついで買いがある」などと売り上げにつながる理由をあげて取り扱いを続けてきました。ただ、批判の声に配慮する形で、陳列棚を表紙が見えにくい奥にしたり、立ち読みできないように透明なビニールカバーをつけたり、ひもで縛ったりする対応はしてきました。また、千葉市に先行して大阪府堺市では一部のコンビニで不透明なフィルムで表紙の一部を隠す取り組みが行われています。

(写真は、あるコンビニの成人向け雑誌コーナー)

新しいサービスに力入れる

 コンビニ業界は、新しいサービスをどんどん取り入れて成長してきました。住民票や印鑑証明をとったり、公共料金を払ったり、お金をおろしたり、コピーをとったり、荷物を預かってもらったり、住民のニーズがあることはたいていできるようになっています。今は、総菜の宅配サービスや店内で飲食できるイートインなどに力を入れています。また、人手不足対策として、オフィスなどで無人コンビニの展開も始めています。こうした進化したコンビニの姿からみると、成人向け雑誌の陳列が少々古いやり方のように感じられます。

まだ成長続ける業界

 コンビニ業界はセブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンが上位3社で日本全体の9割の店舗を占めています。ミニストップは大きく離された4位です。小回りのきくミニストップとしては、成人向け雑誌の取り扱いをやめることで大手3社とは違う色を出そうとしたのかもしれず、コンビニ業界の激しい競争の一端とみることもできます。小売業界全体を見ると、ネット通販が伸びる中、百貨店とスーパーは右肩下がりになっています。リアルな店舗でまだ成長を続けている業態はコンビニです。飽和が言われながらも常に新陳代謝を続けて成長しているとてもおもしろい業界だと思います。

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