11月11日は「独身の日」って知っていましたか。シングルを表す1が並ぶという理由だけですが、中国のネット通販最大手のアリババ集団が2009年にこの名前のバーゲンセールをはじめて以来、中国では年々盛んになり、今年はアリババ1社で1日2.9兆円(1682億元)も売り上げました。これは日本の百貨店の1年間の合計売上高の約半分にあたります。日本でも記念日セールはありますが、海外のまねだったり業界団体や政府が旗を振っていたりするものがほとんどで、1社が始めたものがこれほど大きくなったことはありません。社会主義国中国に民間企業のパワーを見せつけられています。小売業界を志望する人には、消費者がモノを買うきっかけづくりの大切さを知ってほしいと思います。
(写真は、中国・上海で行われたアリババのイベント会場。「独身の日」の売り上げが1682億元だったとスクリーンに表示された=2017年11月12日撮影)
イオンもセール始める
「独身の日」はアリババが作り育てた記念日ですので、アリババが最も大きなセールをしています。ただ中国ではアリババ以外の小売業者も同じようなセールをやっていて恩恵にあずかっています。日本でも小売り最大手のイオンがグループ内の通販サイトで「独身の日セール」を今年初めて実施しました。また日本のアパレル業界や百貨店業界は中国人のネット需要や訪日客のインバウンド消費を取り込もうとセールに参加しています。アリババ発のイベントが中国だけでなく日本にも波及しています。
(写真は、「独身の日」に合わせてイオングループが設けた通販サイト「サイバー“e”モール」での目玉商品=2017年10月30日撮影)
海外から入った記念日が多数
日本の記念日セールは三つの型に分けられます。一つは海外から入ってきたものです。母の日や父の日はアメリカから入ってきました。最近日本でも盛んになっているハロウィーンもアメリカのお祭りが入ってきたものです。バレンタインデーも欧米で古くからある愛の誓いの日ですが、日本では女性が男性にチョコレートを贈って愛を示す日として独自の発達をしました。最近は11月の第4金曜日にセールをする「ブラックフライデー」や「ボスの日(10月16日)」なんていうのもありますが、これらもアメリカ発です。
二つ目は、おめでたいことがあった時にかこつけておこなうセールです。プロ野球で優勝チームが決まったときのセールなどが典型です。お正月の福袋セールなども同じような祝いごと便乗セールです。
(写真は、日本にもすっかり定着したハロウィーン。今やクリスマスに次ぐ一大イベントに=2017年10月31日撮影)
政府が旗降る「記念日」は定着せず
三つ目として、政府が中心になって消費を拡大しようと旗を振る記念日があります。今年始まったのは、経済産業省が旗を振る「プレミアムフライデー」です。月末の金曜日に早帰りして外食をしたり買い物をしたりしましょうとよびかけています。ただ、仕事が減るわけでも有給休暇が増えるわけでもないので、早帰りをする人は少なく盛り上がっていません。1988年に通産省(現経済産業省)によって提唱された「いい夫婦の日(11月22日)」は今も続いていますが、知っている人も多くないのが現状です。
(写真は、「プレミアムフライデー」を盛り上げるためのイベントに集まった企業関係者ら。右から4人目は石原伸晃経済再生担当相=2017年6月30日撮影)
売り方はアイデア勝負
小売業界は、いいものを安く売るのが基本です。ただ、その心がけはどこも同じですので、差をつけるためには売り方が大事になってきます。売り方はアイデアの勝負になります。アリババの「独身の日」セールもアイデアがよかったのでしょう。1が4つ並ぶ覚えやすい日を、結婚難でたくさんいるといわれる「独身」に見立てたことです。独身者は可処分所得が多く、若い人はネット通販にも抵抗はありません。アリババはこの日を華やかな一大イベントとして盛りあげました。話題になってくれば、独身者だけでなく既婚者も参加してきます。消費意欲の旺盛な中国ならではの急激な発展を遂げたのです。消費意欲が乏しい日本では、こんな盛り上がりは簡単ではありませんが、いいアイデアさえあれば消費を刺激することはまだまだできます。志望者はアイデアを考えて、面接で披露してみてはどうでしょうか。
(写真は、アリババグループの通販サイト「Tモール」にあるユニクロのサイト)