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2017年11月08日

好景気で株価上昇 追い風吹く証券業界

銀行・証券・保険

 株価が上がっています。日経平均は9月中旬から上がり始め、とうとうバブル崩壊後にいったん戻した1996年の最高値を超しました。株価上昇は世界的な傾向で、世界的な好景気と金あまりが背景にあります。一般的に株価が上がると証券業界は潤います。利潤の元になる売買手数料は、高値になることと売買が活発になることとで、増えるからです。この株価上昇が一時的なものか長期的なものかについては、見方が分かれます。バブルの可能性もあり長続きしないとみるか、貯蓄から投資への大きな流れが始まっているので長続きするとみるかで違ってきます。やや沈滞気味だった証券業界がおもしろくなってきています。

(写真は、日経平均株価を表示する証券会社の電光掲示板=2017年11月7日撮影)

証券会社は264社

 日本証券業協会に加盟している証券会社は264社あります。対面営業を主体にしている野村証券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大手5社、オンラインの取引をするSBI証券、楽天証券、松井証券、カブドットコム証券、マネックスグループのオンライン大手5社のほか、中小の証券会社はたくさんあります。

(写真は、東京・日本橋にある野村証券本社ビル)

バブル期には「わが世の春」

 証券会社の仕事は、株や債券の売買の仲介や自己売買、企業が株式や社債を発行する際に販売を引き受ける業務などが主なものです。株価が上昇するときには、こうした業務の手数料や運用益が増えるため、利益が増えます。1980年代後半のバブル期には、日経平均が3万9000円近くまで上がり、売買も活発だったため、証券業界は「わが世の春」を謳歌しました。メーカー勤めのお父さんが「証券会社に入社したばかりの娘にボーナスで負けた」と嘆いたという逸話が流布していました。しかし、バブルが崩壊すると、株価は低迷するわ、不祥事は表面化するわ、で証券業界は長い低迷の時代を迎えました。ただ、その間に業界の体質は変わりました。かつては株屋という言葉があったように、強引な売買や不透明な取引が横行する世界でした。しかし、そうした体質が批判されたりオンライン取引が始まったりしたことで、法令遵守の体質に変わってきました。

(証券取引所の年明け初の取引日「大発会」の様子。証券会社などの女性職員たちは晴れ着で出勤する習慣が残っている=2017年1月4日撮影)

欧米に比べて少ない株式投資

 日本の証券業界は昔から「貯蓄から投資へ」というかけ声を発していました。今年8月の日本銀行の調べですが、日本の金融資産の51%が現預金で、株式はわずか10%です。アメリカでは現預金は13%、株式は35%。ユーロ圏でも現預金は33%、株式は18%になっています。日本のお金は、アメリカやヨーロッパに比べて少ししか株式に投資されていないということが分かります。ただここにきて、ほとんどゼロ金利の銀行預金に業を煮やして株式や債券に投資する人が増えてきているようです。「銀行よさようなら 証券よこんにちは」というかつての証券業界のキャッチコピーが思い出される時代になりつつあるのかもしれません。

資本主義を支える仕事

 金融業界は就活生に人気です。ただ、その中で証券業界は銀行に比べると人気が低くなっています。業績の浮沈が大きいとか営業がきつそうだというイメージが影響しているのでしょう。ただ、証券会社は、資本主義のもととなる企業の資本を直接に市場から調達する仕組みを支えています。その仕事を通じて、資本主義はギャンブルに近いアニマルスピリッツで形作られていることが分かるはずです。そうした世界を知ることはきっとおもしろく、ほかの多くの仕事でも役立つでしょう。

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