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2017年05月30日

民泊新法でヨーイドン!ホテル・旅館業界は反発

旅行・ホテル

ブッキング・ドットコム、日本でも民泊仲介を開始へ

 世界有数の宿泊予約サイト、ブッキング・ドットコム(オランダ)のギリアン・タンズCEO(最高経営責任者)が朝日新聞のインタビューに応じ、民泊の仲介を日本でも始める考えを明らかにしました。民泊のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)案が今国会で成立すれば、来春に施行されそうなため、その直後からサイトに民泊物件の掲載を始めるといいます。ほかにも新法をにらんで、外資系大手や国内勢が参入の構えを見せているようです。ホテル・旅館業界の反発にもかかわらず、民泊は来春から全国で広がりそうです。
(2017年5月29日朝日新聞デジタル)
(写真は、民泊事業に参入した京王電鉄が東京都大田区で営業し始めたマンション)

無許可や実態不明が多数

民泊は自宅の空き部屋などに旅行者を有料で泊めることをいいます。日本では東京都大田区や大阪府などの国家戦略特区で認定を受けたり、旅館業法上の簡易宿所として許可を得たりすれば営業できます。
ただ、実際には無許可で営業しているケースが多く、厚生労働省が行った調査では、約3割が無許可で、実態不明も約5割に達していました。このため、政府は民泊を管理する新しい法律案を作り、今の国会に出しています。

営業日数は180日を上限に

この民泊新法では、仲介業者は観光庁に、管理業者は国土交通省に登録することになっています。住宅所有者は都道府県に届け出をします。議論になっていた営業日数は、180日を上限とすることになっています。家主と管理業者には、衛生管理や騒音防止、宿泊者名簿の作成、苦情への対応などを義務づけ、施設には「合法」だとわかる掲示も求めます。仲介業者には宿泊料金や仲介手数料の公表を義務づけます。違反行為の罰則は、最大で罰金100万円か懲役1年とします。

(写真は、東京都内で民泊する中国からの観光客)

2020年に5万室不足

 政府は東京オリンピック・パラリンピックのある2020年までに訪日客を現在より7割ほど多い年4000万人に増やす計画です。目標が実現した場合は国内でホテル・旅館が約5万室不足するという試算があります。政府はこの不足分のかなりのところを民泊で補おうと考えているわけです。

「日本人も使うようになる」

民泊仲介サイトで世界最大手の米Airbnb(エアビーアンドビー)はすでに日本で仲介事業を始めています。同社のサイトには、国内で約4万8000件の物件が登録されています。昨年サイトを通じて宿泊した訪日外国人客は約370万人に上っています。
 ほかの業者は法律が未整備なことや原則的に特区でしか認められないことからから本格参入していませんでしたが、新法ができるとルールさえ守れば全国どこでも営業できるようになるため、参入の構えを見せています。ブッキング・ドットコムもそのひとつで、CEOは「掲載物件が増えるに従い、日本人も使うようになる」と言っています。

ホテル・旅館への配慮はあるか?

 民泊が広がることに既存のホテル・旅館業界は反発しています。訪日客の増加に室数が追いつかない実態はあるものの、民泊の広がり方次第では、経営を圧迫する可能性があるからです。新法では営業日数の上限を180日とすることになっていますが、学校周辺などでは都道府県などが条例で上限を引き下げられるようにする方向です。
新法案が今のままの形で通ったとしても、ホテル・旅館業界に配慮して都道府県が上限を引き下げる可能性もあります。民泊の広がりがどれくらいになるかはまだ不透明なところもあります。

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