元商社マンが経営テコ入れ
銀の粒々と独特のにおい、熟年層にはおなじみ元祖口中清涼剤「仁丹(じんたん)」。メーカーの森下仁丹が、独自のシームレスカプセルで「老舗(しにせ)病」の却を目指しています。元三菱商事の商社マンだった駒村純一社長は2003年当時、経営難の森下仁丹の立て直しに請われて経営陣に入り、2007年から社長に。テコ入れに目を付けたのが、同社が特許をもつ継ぎ目のない服用カプセル「シームレスカプセル」でした。
(2017年5月22日朝日新聞デジタル)
(写真は、現在発売されている仁丹のパッケージ=森下仁丹提供)
成功体験忘れられず変化を好まない「老舗病」
森下仁丹は1893(明治26)年、大阪で創業。1905年に発売した懐中毒消し・口中香剤の「仁丹」が大ヒットします。最初は赤粒でしたが、昭和初期に銀でコーティングされた現在の形態になりました。角帽に大礼服姿の髭面男性のいかめしいパッケージは、昔から変りませんね。ところが、看板の仁丹の出荷額は1982年の約38億円をピークに、2002年には約3億円に落ち込みました。駒村社長は「過去の成功体験が忘れられず、変化を好まない。老舗病に陥っていた」と、振り返っています。
(写真は、1905年に初めて仁丹が発売された頃のパッケージ=森下仁丹提供)
切り札は独自開発のカプセル
その駒村社長が目をつけたのが、特許のシームレスカプセル。服用カプセルの素材であるゼラチンは水に溶けますが、内側に水に溶けない油膜を張って三層構造にすることにより、液体でも微生物でも閉じ込められます。この技術を応用して、服用したビフィズス菌が胃酸で壊れないようにしたカプセルを開発、「ビフィズス菌を小腸まで届ける」とうたう健康食品「ビフィーナ」を発売しています。同シリーズはいま売り上げの約3割を占めているそうです。国内外のメーカー向けサプリメントやフレーバーガムのカプセル受託事業も、売り上げの3割強にのぼります。
(写真は、森下仁丹が開発した継ぎ目のないシームレスカプセル)
「オッサン、オバハン求む!」
森下仁丹は「第四新卒」と称して今春の就活シーズンから40~50代を中心に幅広い年齢を対象に、「業界を問わず社会経験を積んだ人材」を新卒と並行して採用選考しています(「森下仁丹『第四新卒』採用『ほしいのはやる気』」2017年3月29日朝日デジタル)。キャッチフレーズは「オッサン、オバハン求む!」。かつては、老舗らしく、従業員の多くが新卒採用からの「たたき上げ」でしたが、現在は従業員約300人の半数は転職組だそうです。同社サイトの採用情報ページの一節には、「新生、森下仁丹をいっしょに築きあげてくれる人材を募集します。ベンチャー精神で新しいことにトライする当社に、老舗ののんびりした空気はありません」とあります。どんな企業でも時代に合わせて日々新たでなくてはならないのですね。そういう進取の精神が会社にあるか、企業選びではチェックしておきたいところです。
(写真は、森下仁丹の駒村純一社長)