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2017年06月02日

出版業界、漫画は雑誌からアプリへ

マスコミ・出版・印刷

漫画もスマホで読む時代 「雑誌より知名度が上がる」

 3大漫画週刊誌をもつ集英社(「少年ジャンプ」)、小学館(「少年サンデー」)、講談社(「少年マガジン」)が、軒並みスマートフォン向け漫画アプリへの進出を加速させています。背景には読者の急速な雑誌離れがあります。大手に限らず、いま出版とITの業界間で漫画をめぐる競争や融合が進んでいます。
  
(2017年5月31日朝日新聞デジタル)
(写真は、人気のアプリ「マンガワン」の画面)

3大漫画誌がアプリに本腰

 集英社の「少年ジャンプ」の電子版「少年ジャンプ+(プラス)」の今年2月のダウンロードは118万人(ニールセン調べ)。同編集部は、来年の創刊50年を記念し「アプリ開発コンテスト」を実施しています(6月4日まで企画募集)。小学館のアプリ「マンガワン」は今年4月、サービス開始から2年5カ月で1000万ダウンロードを突破し、1日平均130万人以上がアクセスしているそうです。講談社は8年ほど前からアプリ開発を進め、「マガジンポケット」など複数のアプリを展開し、同じく4月から1カ月間、アプリの開発企業と技術者を公募しました。

売れない週刊誌、電子でカバーできるか

 一方で、紙の漫画誌は、1994年に部数650万超だった「少年ジャンプ」が今年200万部割れしました。「少年マガジン」も昨年100万台割れ、「少年サンデー」は、この10年足らずで6割超減らし、31万9千部と、いずれも苦戦しています。それぞれのアプリは無料と課金できる部分を分けたり、時間制限を設けたり、さらに、電子版でしか読めないコンテンツも入れるなど、読者誘導に躍起です。「紙」の落ち込みをどう「電子」で補っていけるか、新しいビジネスモデルの構築が急がれています。

IT系がリードした漫画アプリ

 漫画アプリでは出版社よりIT企業の方が先行しています。ニールセンの調査によると、今年2月に100万以上利用された漫画アプリは6つ。この中で出版社系アプリは、先の「少年ジャンプ+」(5位)だけ。1位はLINEの「LINEマンガ」(279万人)、2位はNHNcomocoの「comico」(260万人)でした。いずれもIT系で、ゲーム制作のノウハウを活かして進出しました。もともと少年漫画は、漫画家と出版社の編集者が二人三脚で作品を作り上げてきたものです。出版社は「漫画家を育てよう」という意識があり、育てた漫画家をそれぞれの出版社が抱え込む傾向がありました。IT系は優良な漫画コンテンツを取り込めるかが課題です。

「稀勢の里物語」は漫画アプリも月刊誌も

出版会社とIT企業は競争するとともに融合化しています。たとえば、漫画「北斗の拳」のキャラクター「ラオウ」の化粧回しを横綱・稀勢の里に贈った漫画制作会社コアミックス。自社の漫画アプリ「まんがホット」と、雑誌「月刊コミックゼノン」で、「稀勢の里物語」の連載を開始しました(「稀勢の里、『ラウル』の次はマンガに 逆転Vの舞台裏も」朝日新聞デジタル5月9日)。

 コアミックスの堀江信彦社長は集英社の元「少年ジャンプ」名物編集長です。「北斗の拳」の漫画家である原哲夫さんらも出資して、2000年にコアミックスを設立。同社には出版大手の新潮社も出資しています。紙の編集者がITに移って新しい可能性を開拓しているケースです。IT、マスコミ・出版志望者にも知っておいてほしい業界の流れです。

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