電子書籍、主導できぬ出版社 アマゾン、読み放題から人気本を除外
アマゾンジャパンが8月から始めた電子書籍の読み放題サービス「キンドル アンリミテッド」で、始動直後から人気のコミックや写真集がつぎつぎ対象から外され、大手中心に猛反発し講談社は抗議声明を出しましたが、アマゾン側は詳しい経緯を説明しないまま。出版社も「日本最大の書店」アマゾンに押し切られているかたちです。
(2016年12月21日朝日新聞デジタル)
(写真は8月、読み放題サービスの開始にあたって開かれた会見の様子です。担当者がタブレット端末での利用方法を説明しました)
人気上位のタイトルが消えていくミステリー?
「キンドル アンリミテッド」は8月3日、小説やコミックなど「12万冊のタイトル」を誇り、にぎにぎしくスタートしました。この欄でもアマゾンの企画公表のニュースを取り上げています(「アマゾンの電子書籍読み放題サービス開始で出版業界ピンチに?」6月28日)。ところが開始1週間ほどで人気上位の書籍がサービスから消えていたのです。
日本のコミックファンの需要を読み誤った?
アマゾンは売れ筋のコミックや写真集を出している主要出版社には、その作品が一定以上読まれた場合、年内に限ってマージンを割り増す優遇条件を提示していました。ところが、そのために用意した資金が、開始からわずか1週間ほどで底をついたというのです。電子出版業界では「アマゾンが需要の読みを誤るくらい日本のコミックファンが猛烈に読んだため」などと言われています。配信再開を求める出版社に対し、アマゾン側は優遇条件の変更を申し入れ、受け入れられなければ、さらにタイトル外しをすると通告したそうです。
抗議声明を出した講談社
タイトル外しは続き、講談社は10月3日付で抗議声明を公表しました。<弊社が抗議を行っている最中に、アマゾン社は、9月30日夜以降、弊社が提供する1000を超える作品すべてを、一方的に同サービスから削除しました>と説明、<書目を提供してきた出版社として大変困惑し、憤っています><サブスクリプション・モデルと呼ばれる定額のコンテンツ提供サービスの健全な発展のためにも、引き続きアマゾン社には善処を求めてまいります>などと書いています。
メーカーの出版社より流通のアマゾンの方が主導権
出版社の抗議にも関わらず、アマゾンが強気でいる背景を冒頭の記事は、アマゾンが特に電子書籍市場の6割を占める「一強」で、流通を握っているため、その動向を無視できないと解説しています。かつて、スーパーマーケットが大量販売を背景にメーカーに対して価格決定権を握ったのと似た状況が、いま出版業界で起きているといってよいかもしれません。しかし、スーパーが「消費者の味方」を標榜(ひょうぼう)したのに比べ、アマゾンのタイトル外しはネット上でもコミックファンの間で酷評が飛び交っています。消費者目線のサービスってなんだろうと、考えさせられる事態です。