出光、昭和シェル株3割超を取得 公取委の統合承認受け
公正取引委員会は、石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油の経営統合と、JXホールディングス(HD)と東燃ゼネラル石油の経営統合をいずれも承認しました。しかし、出光と昭シェルの統合には、出光の創業家が反対しているため、出光が取得する昭シェル株は計画した3分の1に届かない31.3%にとどまりました。これでは、経営統合にはならず、現在とあまり変わらないことになります。一方、JXと東燃は来年4月1日に統合持ち株会社JXTGホールディングスを発足させます。売上高は2位の出光の約3倍になる見通しで、当面はJXTGが業界でダントツの存在になります。
(2016年12月19日朝日新聞デジタル)
(写真は出光のガソリンスタンドです)
3社の争いになるはずだったが…
石油元売り会社は、現在国内に7社あります。うちキグナス石油と太陽石油は相対的に規模が小さいため、大手は5社になります。このうち、経営統合を発表していたのが、1位のJXHDと3位の東燃ゼネラル石油、それに2位の出光興産と5位の昭和シェル石油の2組です。4位のコスモエネルギーHDにはまだ経営統合の動きはないため、日本の石油元売り大手は当面、3社の争いになるものと思われていました。
(図は、2016年9月の朝日新聞に掲載された勢力図です。「?」マークがついていた出光興産と昭和シェル石油の統合は、その後実現しませんでした)
創業家との全面対決避けた出光
ところが、出光株の20パーセント以上を持つ出光創業家は、昭シェルとの経営統合に強く反対しました。会社が昭シェル株を取得するためには株式の公開買い付け(TOB)をしないといけないようにするために、創業家としても昭シェル株を取得するなど対抗措置をとっています。公開買い付けを強行すると、創業家と全面対決となり、会社にとっても大きなリスクになります。このため、公開買い付けしなくていい範囲の31.3%の取得にとどめざるを得なかったわけです。
ただ、これでは出光が昭シェルの経営権を握ることはできませんので、関係会社という形にしかなりません。出光と昭シェルは独立した会社としてまだ残ることになり、JXTGが発足したあとは、大手4社体制がしばらく続くことになります。この場合、1位と3位が統合したJXTGが2位の出光を大きく引き離した巨大トップ企業になるわけです。
(写真は、昭和シェル石油のガソリンスタンドです)
強すぎる1位でいいか
石油元売り会社は、1980年代前半には17社もありました。海外から原油を輸入して国内の精製工場で重油、軽油、ガソリンなどに分解して国内の需要家に売るという仕事です。どの会社の製品にも品質の差はなく、競争は価格になります。しかも、国内の需要は人口減やエネルギー源の変化によって落ち気味です。安い価格で提供するためには、規模を大きくすることによって無駄を省くことが必要です。
こうして、80年代後半から現在まで統合が繰り返されてきました。30年を経て統合もいよいよ最終局面にきているのです。ただここで、1位と2位の差が約3倍になると、1位はますます価格競争力がついて強くなることが予想されます。業界が健全であるためには、競争が欠かせません。出光、昭シェルの統合の行方とコスモエネルギーHDの行方が注目されます。