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2016年12月28日

電力・ガスの仁義なき戦い

エネルギー

東電、家庭向け都市ガス販売 来夏から、4万件契約目標

 東京電力ホールディングスは、2017年7月から首都圏で家庭向けの都市ガス販売を始めると発表しました。17年4月から都市ガスは家庭で自由に選べるようになるためです。16年4月からは電力が家庭で自由に選べるようになっていて、東京ガスが東京電力の契約を奪っています。
 都市ガス会社が電力に、電力会社が都市ガスに参入するという構図は、近畿圏や中部圏でも見られそうです。これまであった縄張りがなくなり、お互いが相手の縄張りに乱入しようとしています。消費者にはうれしい争いですが、両業界の人たちは疲れる時代になろうとしています。

(2016年12月26日朝日新聞デジタル)

(写真は8月、読み放題サービスの開始にあたって開かれた会見の様子です。担当者がタブレット端末での利用方法を説明しました)

東電は東ガスの1割を狙う

電力自由化では、東京ガスは東京電力の持つ約2000万件の契約のうち56万件超を奪っています。新しく電力に参入した会社の中では最もたくさんの契約を持つ会社になっています。大阪ガスも関西電力から約20万件超の契約を奪っています。
 ここまでは、電力会社がガス会社に一方的に攻め込まれていますが、17年4月からは、電力がガスに攻め込めます。とられた以上の契約をとろうと、手ぐすねを引いています。東京電力は、2019年度には100万件に都市ガスを供給できる体制を整える計画です。現在、東京ガスが持っている契約は約1100万件ですから、その1割弱を奪おうとしているわけです。

(写真は、家庭向け電気をPRする大阪ガスの取り組みの様子です)

価格競争が起きる

 戦いの武器は、やはり価格です。品質やサービスで違いを出すのは、ガスの場合は難しいためです。東京電力はまだ価格を明らかにしていませんが、関西電力は大阪ガスより最大8%安くすると発表しました。電力会社は、電力とガスのセットの場合は割引率を大きく、ガスだけの場合は割引率が小さい価格設定にするようです。当然、迎え撃つガス会社も料金体系を引き下げる方向ですので、価格競争が起きるのは間違いありません。

戦いの舞台は都会

 ガス業界には、都市ガス業界とLPガス業界があります。都市ガスは導管でガスを需要者に送り、LPガスはボンベを需要家に配達します。日本全国で都市ガス会社は約200社、LPガス会社は約2万社あります。
 都市ガス会社のほうが規模の大きい会社が多く、特に、首都圏の東京ガス、近畿圏の大阪ガス、中部圏の東邦ガス、北九州圏の西部ガスの4社が大手です。体力のあるガス会社はこの大手4社くらいですので、電力対ガスの熾烈な戦いの舞台は都会です。

求められる変化に対応できる人

 少し前まで、電力業界と都市ガス業界は、安定を求める就活生にとても人気がありました。ただ、東京電力福島第一原発の事故を境に電力業界の安定が揺らぎ、自由化によってガス業界も安穏とはしていられなくなってきました。両業界には変化に対応できる人が求められるようになっています。

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