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2016年09月23日

中国の出版社が渡辺淳一文学館を購入 日本文学は“売れる”?

マスコミ・出版・印刷

渡辺淳一文学館、中国の出版社が購入

 「失楽園」や「化身」などベストセラー作家、故・渡辺淳一さん(1933~2014)の業績を顕彰する渡辺淳一文学館(札幌市)を、中国の出版社が購入しました。より多くの観光客を呼び込む狙いがあるとみられます。

渡辺淳一文学館、中国の出版社が購入 札幌(2016年9月20日 朝日新聞デジタル)

来館者はピーク時の4割に

同館を大王製紙から買ったのは、中国・山東省青島市の青島出版集団です。買収金額は明かされていません。

 大王製紙は社会貢献の一環として渡辺さんの故郷、札幌に1988年に文学館を開館しました(公式ウェブサイト)。建築家・安藤忠雄さんの設計で、建築専攻の学生さんも訪れるようですが、このところの入館者はピーク時の4割程度の年間約3000人と苦戦していました。

日本の活字文化は売れる

 青島出版集団は、渡辺さんの作品の翻訳出版を手がけていて、渡辺作品は中国でも人気だそうです。札幌市のウェブサイトによると、札幌市が迎える外国人宿泊観光客は2015年、191万8000人。

国別で最も多いのが中国(55万7406人)で、中国人に人気の地域ですから、書籍販売と観光をリンクさせる中国出版社の思惑はあたるかもしれません。ここで注目したいのは、「日本の活字文化は売れる」という事実です。

(写真は、中国・北京の大型書店に並ぶ渡辺さんの作品)

大型店が消える

9月21日付の朝日新聞朝刊の文化・文芸欄は「書店撤退 大型店でも/ネットに押され、売り上げ減 賃料重荷に」という特集を組んでいます。

冒頭に、大手書店チェーンの紀伊国屋書店が8月、東京の新宿南店を6階の洋書だけ残し1~5階から撤退、その前年には西武池袋百貨店にあったリブロ池袋本店が閉店するなど、繁華街から次々消えていく大型書店の窮状を紹介しています。

「人生がときめく片づけの魔法」は欧米で700万部!

 ネット書店や電子書店にお客が移っているのも確かですが、今後じわじわ効いてくると思われるのが人口減少です。日本語を話す人の大半は日本人。日本の出版ビジネスも日本に限られてきました。しかし、それではジリ貧。これからは英語や中国語など多言語での出版が活路になるでしょう。

 たとえば、近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』シリーズ(サンマーク出版)の売上げは、欧米を中心に700万部にも達しています。出版界の多言語展開の可能性に注目してください。

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