新居選びはVRで(2016年8月29日朝日新聞デジタル)
住宅販売の現場で仮想現実(VR)を活用した試みが広がり始めている。完成物件を自分なりにイメージし、遠くて行きにくい物件でも、映像のなかに入り込んだような感覚を味わえる。販売会社や住宅メーカーは、住み心地を「体感」できると受注増に期待する。
住宅販売の現場で仮想現実(VR)を活用した試みが広がり始めている。完成物件を自分なりにイメージし、遠くて行きにくい物件でも、映像のなかに入り込んだような感覚を味わえる。販売会社や住宅メーカーは、住み心地を「体感」できると受注増に期待する。
みなさんはまだピンとこないかもしれませんが、ここ数年で首都圏のマンション、特に新築マンションは価格がじわじわ上昇していました。不動産情報会社・東京カンテイの調べでは、2015年の首都圏の新築マンション1戸当たり平均価格は5183万円と前年(4653万円)に比べなんと約11%も上昇。坪単価も14%近く上昇しています。東京五輪決定などを受けて東京都心部の地価が上昇。東日本大震災からの復興事業など大型プロジェクトが続くことによる人件費、材料費の高騰もあって値段は高止まりしています。とはいえ、消費者の手の届かないところまで価格が上がってしまっては商売は成り立ちません。事実、記事によれば新築マンションの成約率は好不調の目安となる7割を切っているといいます。
そもそも、新築マンションはまだ建っていない物件を売り買いするわけで、買い手からすれば実際に自分が住む部屋や建物を体感できないまま大きな買い物の決断を迫られるという分野でもあります。これ以上新築マンションの価格が上がれば、そんなリスクを払ってまで買わなくてもいいのではと判断する消費者はぐっと増えるでしょう。とはいえ、この価格上昇は土地や材料費上昇に伴うものでもあるので、マンションを値下げしてしまっては分譲業者が元をとれなくなります。今回記事でとりあげたVRは、この流れへの対応策とも受け止められます。
VRと不動産との連携は様々な可能性を秘めています。急な単身赴任や引っ越しの際に遠方まで物件を内覧に行く手間も、VRがクリアしてくれるかもしれません。海外の富裕層に向け、日本の別荘地を販売することもぐっとやりやすくなるでしょう。分譲業者は高いコストをかけてオープンハウスを開いたりモデルルームを公開する必要もなくなるかもしれません。そういったコストが削れれば、不動産価格も今より手頃になるかもしれませんね。
技術の進化は、ビジネスの姿をがらっと変えることがあります。VRってなんだか最先端すぎてよくわからないと敬遠しているだけでは、こういったビジネスモデルの転換に乗り遅れてしまいかねません。不動産業界志望者以外の人でも、自分の志望業界がVRを取り入れるとどんな変化が起こるのか、いろいろシミュレーションしてみるといいかもしれませんよ。
2024/10/11 更新
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