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2016年07月08日

UR都市機構の「高齢化対策」はコンビニが頼り?

流通

コンビニ 高齢化団地に支援拠点(2016年7月5日朝日新聞朝刊)

 UR都市機構が管理する団地の空き店舗に、コンビニエンスストア大手、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの大手3社が出店を進める。高齢化が進む入居者の買い物支援などが狙い。全国で約100カ所に設け、家事代行サービスも検討する。URは全国に1664団地(74万戸)を管理するが、高齢者世帯が約4割を占め、年200人前後の住民が孤独死している。

“巨大な大家さん”UR都市機構って何?

(写真は、千里ニュータウンスタート時に登場した簡易型ユニットバス「バスオール」。風呂のない住戸が多かったために作られた)
 UR都市機構の正式名称は「都市再生機構」で2004年に設立された独立行政法人で、本社は横浜市にあります。旧日本住宅公団が昭和30年代から建ててきた公団住宅から、近年建てられた都心部の超高層住宅まで、賃貸住宅の管理をする“巨大な大家さん”です。千里ニュータウン、多摩ニュータウン、筑波研究学園都市、関西文化研究都市、恵比寿ガーデンプレイス、横浜みらい21など、さまざまな「都市再生事業」も手がけています。

孤独死が“オールドタウン”の切実な問題に

 大阪の千里ニュータウンは1961(昭和36)年が初入居で、すでに55年が経ちます。30代で入居した夫婦がずっと住み続けていれば夫は男性の平均寿命が尽きているし、妻は最晩年を迎えているころです。ニュータウンならぬ「オールドタウン」と呼ばれたりしています。日本の65歳以上の人口の割合(高齢化率)は世界最高水準とはいえ26%ですから、UR都市機構の「高齢者世帯が約4割」の深刻さがわかるでしょう。こうした高度成長期に都市周辺にぞくぞくと出来た集合住宅の孤独死が切実な問題になっているのです。

一時は少子化に泣いたコンビニ

 一方、日本のコンビニエンスストアの歴史は1974(昭和49)年、セブン-イレブンの1号店が開店してから始まります。当初の主要客層は、若者・男性単身者でした。しかし、少子化の影響を受け、2000年には新規出店分を除く既存店売上高が「前年割れ」し、新聞が「少子化ショック」などと書きました。それが一転、シニア層・働く女性をメインターゲットにして近年、盛り返してきています。足腰の弱い高齢者向けにコンビニの宅配サービスも広がってきました。さらに進んで、地方自治体の中には、コンビニに高齢者の見守りサービスをお願いするところも出ています(「セブン、日南のお年寄り見守り」3月11日朝日新聞宮崎版)。それによるとセブン-イレブンは日南市内の10店舗で、商品や食事を高齢者に宅配する際に安否確認を行う協定を日南市と結びました。

少子高齢化を取り込んだコンビニ

 セブン-イレブンでは同様の見守り協定を2012年に石川県ではじめ、現在では全国約230自治体と締結しているそうです。企業としては新たな需要掘り起こしにもなります。日南市の場合、企業から市に協定締結を打診したそうです。少子高齢化は日本の差し迫った課題ですが、そうした人口動態を注視してビジネスを対応させたコンビニ業界の「変わり身」には学ぶところが多いと思います。ひとつの企業だけでなく、業界全体を社会の動きとあわせて研究することも大切です。

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