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2016年03月22日

志望企業は「アホなこと」をしているか? クロスカンパニー社のチャレンジに学ぶ

アパレル・ファッション

(波聞風問)持続的成長 新事業、開拓し続けてこそ(2016年3月20日朝日新聞朝刊)

 俳優の宮崎あおいさんが歌いながら浜辺を歩く――。こんなテレビCMを流しているアパレル企業が1日、社名を変えた。
 「クロスカンパニー」から「ストライプインターナショナル」へ。会社設立から21年。2016年度中の東証1部上場をめざし、アパレルから衣食住全体に事業を広げていくという。
 アパレルの周辺分野でも新事業を手がけている。昨年9月に、女性の普段着のレンタルを始めた。新作ファッションが、月5800円(税別)の定額で何着でも借りられる。
 新事業が店舗売り上げを減らさないか、などと心配したが、新しい客層を開拓し、貸し出した服を中古市場に回すなどすれば採算が取れると判断した。
 石川康晴社長は「『主要事業の利益の3割を新しい事業に投資する』とルール化している。持続的な成長には、新事業の創出が必要だからだ」と話す。

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 ベテラン経済記者が持ち回りで執筆し、毎週日曜日(4月からは火曜日)に掲載されるコラム「波聞風問(はもんふうもん)」から今回のトピックをとりあげます。「クロスカンパニー」という社名は聞いたことはなくても、「アース ミュージック&エコロジー」というブランドはご存じではないでしょうか。ザ・ブルーハーツの名曲「1000のバイオリン」を宮崎あおいさんが熱唱するCMが非常に印象的でした。1999年にブランドを立ち上げ、現在はグループ全体の売り上げが1000億円を超えるまでに成長しました。ちなみに日本の上場企業のうち1000億円を越える売上高があるのは約900社。日本全体の会社数は約400万社と言いますから、日本有数のトップ企業といっても過言ではありません。

 そんなクロスカンパニー社ですがこのたび社名を変え、業態も日常着などのレンタルサービスをはじめ、アパレルにこだわらず生活用品全般に広げる方針を打ち出しました。ストライプという社名には「自由と改革の象徴という意味がある」と石川康晴社長は記者会見で語っています。

 記事でも指摘しているとおり、企業が生き残り、成長しつづけるためには「変わり続ける」覚悟が必要です。ウォークマンのソニー、液晶のシャープ、ファミコンの任天堂など、市場を切り開く革新的商品を生み出した大会社が苦しんでいる状況を見ると、とりわけ成功をおさめた企業が「変わり続ける」ことがいかに難しいかがわかります。旧クロスカンパニー社は利益の3割を新事業に投資するという「ルール」を設け、「成功体験にこだわりつづける」という大会社が陥りがちな罠から抜けだそうとしているのです。

 就活ニュースペーパー内で連載中の「人事のホンネ」で取材した化学メーカー「帝人」の採用担当者は、自分が帝人を選んだ理由を「いろんなことにチャレンジしてきた会社で、アホだけど面白そう」と感じたからだと述べています。帝人はもともと繊維メーカーですが、1970年代に未来事業本部という組織で油田開発や食品加工などいろいろな事業にチャレンジし、その中からヘルスケア部門の成功が生まれ、今日まで続く会社の礎となったといいます。

 みなさんが志望している会社に、「アホだなあ」と思えるようなチャレンジはありますか? 安定よりも成長を、平穏よりも波瀾万丈なビジネスパーソンライフを目指しているのでしたら、ぜひ会社の本業や柱となっている事業以外の取り組みにも目を向けてみてください。「アホだなあ」の中に、会社が数十年後も生き残るためのヒントが隠されているかもしれません。ちなみにこの旧クロスカンパニー社、銀座の東京本社オフィスの真ん中に「未来妄想室」というガラス張りの部屋を設け、社員の注目のもと新規事業や組織の未来について話し合う場を作っているそうです。アホだけど、面白そうな試みですね。

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