あずきバー、10円値上げへ(2016年3月15日朝日新聞名古屋本社版朝刊)
井村屋は主力商品のアイス「あずきバー」を4月1日出荷分から税抜きで10円値上げすると発表した。1973年発売で、値上げは1992年以来、24年ぶりとなる。1本60円から70円(税抜き)になる。人件費や物流費のほか、あずきバーの原材料の高騰も理由という。「自助努力ではコストを吸収できない」(広報)としている。
井村屋は主力商品のアイス「あずきバー」を4月1日出荷分から税抜きで10円値上げすると発表した。1973年発売で、値上げは1992年以来、24年ぶりとなる。1本60円から70円(税抜き)になる。人件費や物流費のほか、あずきバーの原材料の高騰も理由という。「自助努力ではコストを吸収できない」(広報)としている。
井村屋(本社・三重県津市)のホームページの商品情報を見ると、わざわざ「固く凍っているため、歯を痛めないようにご注意ください」と断っています。ガンコ一徹、和のテイストを守り続けて、中高年層から支持を受けてきました。原材料は、砂糖、小豆、水あめ、コーンスターチ、食塩。乳化剤や香料など添加物はいっさいなしのシンプルさです。ここ数年の円安による輸入食品の高騰が響いたというのは想像に難くありません。この記事の前日、赤城乳業(本社・埼玉県深谷市)のアイスバー「ガリガリ君」も「ついに値上げ 25年ぶり」という記事(3月12日朝日新聞朝刊)が出ていました。こちらも1本60円から70円(税抜き)になります。材料高騰の例として「アイスバーに使う木製の棒の価格は2013年比で9割アップしているという」と書いています。
じつは2014年~2015年に、乳業メーカーが相次いでアイスを値上げしたことがありました。各企業は乳原料やチョコレートなどの価格高騰のためと説明しました。このとき井村屋もアイスクリーム20品目の値上げをしましたが、主力のあずきバーの値段は据え置いたのです。2015年9月中間決算によれば、上半期(昨夏)のあずきバーの販売本数は1億9800万本にのぼります。長年、主力商品として社業を支えてきたあずきバーの属性には、味やパッケージ、ネーミングに加えて「値段」もあります。10円の値上げを消費者はどう思うでしょうか。定番商品の重大な変更ととらえて「高くなったので他のアイスにしよう」と思うのか「10円多く払っても、食べたい」と選んでくれるのか。他商品の値段が相対的に上がっているという要素もその決断に影響するでしょう。そこにメーカーと消費者の“心理戦”が繰り広げられます。ネットの書き込みをのぞいてみると、確かに両方の意見が出ています。
近ごろ、行動経済学ということばをよく聞きます。近代経済学が「合理的な行動をする人間」をモデルにしているのに対して、行動経済学は「人間は必ずしも合理的な判断をするわけではない」ことを前提に、その経済活動の法則性を解き明かそうという学問です。「経済学の学者のいうようには実際のマーケットは動かないですよ」。流通大手の経営者から、こんなことばを聞いたことがあります。<非合理的な顧客の心理を読んで先回りして行動する。そのためには自分が顧客の目線になること>。これが彼の成功の秘訣だと感じました。メーカーも、流通も、どこでも、「お客さまの身になって考える」行動原則、これから社会に巣立つみなさんも身につけてほしいと思います。
2024/10/16 更新
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