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2016年03月08日

東武百貨店から200人が早期退職、百貨店生き残りの道とは?

流通

東武百貨店、約200人が早期退職(2016年3月8日朝日新聞朝刊)

 関東で二つの百貨店を展開する東武百貨店が、正社員の早期退職を募り、全体の2割にあたる約200人が退職したことがわかった。個人消費の伸び悩みで売上高が低迷しており、人件費の削減によって立て直しをはかる。
 同百貨店は、東京都の池袋店と千葉県船橋市の船橋店を運営している。正社員は1000人程度いたが、昨秋に40歳以上の早期退職を募集し、2月末で退職したという。

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 「不思議な不思議な池袋 東が西武で西、東武~♪」という某家電量販店のCMソングをご存じでしょうか?東京・池袋の東口には西武鉄道池袋線の駅、西口には東武鉄道東上線の駅があり、それぞれ駅に隣接して西武百貨店、東武百貨店がそびえ立っています。就活などではじめて池袋に足を運ぶ方は参考にしてください。この東武百貨店が「早期退職」を募った、というニュースです。

 早期退職については2015年12月12日の今日の朝刊「『東芝の大リストラ』で電機業界を知ろう」でも説明しました。退職金を通常よりも多く受け取ることなどを条件に定年前に退職することです。経営が厳しくなった会社は売上増とともに経費削減をはかりますが、もっとも効果が高いのが人件費の削減。百貨店業界の40歳時点での平均年収は543万円(東洋経済新報社『業界地図』2016年版より)とのことで、200人が退職すれば年間約11億円のコストカットです。東武百貨店の総売上(2014年度)は1495億円ですから、だいたい売上の1%分のコストが浮いた計算となります。一方従業員は、このまま会社にいると給料が下がるかより悪い条件で退職を迫られると考えれば希望退職に応じるわけです。希望退職者が多い会社は、それだけ会社の未来に対して従業員が悲観的に感じているともとれますね。

 記事によれば逆風の要因は「(百貨店の主力商品である)衣料品などの販売が振るわない」ことで、訪日外国人による消費の恩恵も一部にとどまるとのことです。アベノミクス下でも個人消費は伸び悩み、インバウンド需要の伸びもいずれ止まります。リストラによる立て直しにももちろん限界があるわけで、新たな業態を探すことが百貨店業界にとって急務といえそうです。

 そういった動きの一つが、消費者のニーズに細かく対応するための小型店舗の展開。たとえば三越伊勢丹ホールディングス(HD)はファッション雑貨やオリジナルブランドの婦人服、食品やギフトを扱う小型店ブランド「エムアイプラザ」に力を入れ、2018年度には180店舗に増やす計画を立てています。名古屋駅前に9日リニューアルオープンする「大名古屋ビルヂング」内には、多くのファッションブランド店をそろえた中型店「イセタンハウス」を進出させました。他社も多種多様な店舗を展開し、幅広い顧客層にアピールしようと必死です。業界を志望する人にとってはこれからマイナスのニュースが増えるかもしれませんが、その中でもこのような生き残りに向けた動きをしっかりおさえておきましょう。

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