「MIRAI」公用車に (1月21日朝日新聞名古屋本社版朝刊)
水素を燃料に走る燃料電池車(FCV)を普及させようと、愛知県と同県豊田市が20日、トヨタ自動車の「MIRAI(ミライ)」を1台ずつ公用車に導入した。県によると、自治体への市販FCVの納車は全国で初めて。
水素を燃料に走る燃料電池車(FCV)を普及させようと、愛知県と同県豊田市が20日、トヨタ自動車の「MIRAI(ミライ)」を1台ずつ公用車に導入した。県によると、自治体への市販FCVの納車は全国で初めて。
水素を使って発電し、モーターを回転させて走る「燃料電池車」(FCV)のニュースが続いています。これは名古屋本社版の記事です。これからも、いろいろな話題が各地で出てくることでしょう。
そこで確認です。考えたことが、ありますか。燃料の水素は、どうやって製造したり採集したりするのでしょうか?
「そういえば、知らなかった」と気づいた人も、そもそも疑問にさえ思っていなかった人も、この機会に理解してみましょう。
水素は、石油や天然ガスなどと違って、自然界にそのままの状態では存在しません。水素という元素(H)は、水(H?O)などを構成するのでもちろん地球上に大量に存在するのですが、そのまま燃料として使える「燃える気体」としての水素ガス(H2)は、天然にはないのです。地下を掘ったり空気を精製したりしても得られません。
では、どう水素ガスを入手すればいいのでしょうか。いろいろな方法がありますから、まずは分類してみましょう。
【1】工業製品を生産する過程で「おまけ」として生まれる。
【2】化学的に製造したり、水を電気分解したりする既存技術を使う。
【3】水を加熱したり、光触媒を用いたりする将来技術に期待する。
【1】の方法で得られる水素は「副生水素」などと呼ばれます。副次的に生まれる水素です。具体的には、
①さまざまな化学製品の原料となる「カセイソーダ」を作る過程
②鉄を作るために必要な「コークス」を生み出す過程
③石油精製プラントで原油からナフサなどを精製する過程
などで、この「おまけ水素」が発生します。いま世の中に流通している水素ガスの多くが、これらの方法で得られています。ただし、たとえば石油精製プラントで生まれた水素は、そのプラントで発生する不純物の硫黄などを除去するために使われており、むしろ不足しています。だから、こうした副生水素をこれから本格的に利用していくには、硫黄除去の代替技術を生み出すことなどが必要です。
【2】は「おまけ」ではなく、水素を得ることを目的とした設備を使う方法です。たとえばアンモニア製造装置には必ず、水素を発生させる機械がついています。アンモニア製造の遊休時などにこれを利用することも可能でしょう。これらは元をただせば【1】と同じ、石油に由来する水素です。
「石油から」でなく「水から」水素を生成する方法もあります。水を電気分解すると水素が得られることは、中学理科の知識でも知られていますが、応用するには効率よい電気エネルギーが必要になるなど、課題が山積みです。ちなみに、電気エネルギーで水素を得て、その水素をまた電気に変えることは、一見すると「非効率」にも見えるでしょう。しかし、たとえば太陽光発電や風力発電で得られた余った電気をいったん水素に変えて貯蔵しておく、という考え方もできるので、単純に非効率なわけではありません。
【3】の将来技術はどうでしょうか。水を直接、熱で分解し水素ガスを取り出すには4000度もの高温が必要なのですが、現在もっと低温で可能にする方法が模索されています。光触媒で分解する方法もありますが、まだ工業的に応用できるレベルには達していません。
つまり現状では、もっとも製造コストが低いのは【1】です。FCV普及のためには、より安価に効率よく【2】や【3】を可能にする技術開発が必要です。この困難な挑戦を、千代田化工や川崎重工業といった機械・プラントメーカーが積極的に続けています。
2024/12/12 更新
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