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2016年04月12日

「アベマTV」に成算は? トップインタビューから読み取る

通信・インターネット関連

「スマホテレビ局」開設 テレ朝×サイバーエージェント(2016年4月12日朝日新聞朝刊)

 テレビ朝日とサイバーエージェントが設立したインターネット放送局アベマTV(ティーヴィー)が11日、開局した。動画配信サービスの台頭や若者のテレビ離れに危機感を抱いたテレ朝が、IT大手のサイバーに主導権をゆだねて合弁会社を設立。他の動画配信サービスと異なり、テレビではなくスマートフォン主体で、しかも無料で見られる新機軸を打ち出した。

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 放送業界とIT業界の融合というテーマは「進むTV・IT連携!『定額見放題』で関連業界激変?」(「今日の朝刊」2015年9月3日)など、このサイトで何度か取り上げています。スマホと放送の連携というテーマでは、NTTドコモが国内初のスマホ用放送局として立ち上げた「NOTTV」が4年で事業撤退するというニュースを本欄で取り上げました。(「業界トピックス」2015年12月1日)

 今回サイバーエージェントとテレビ朝日がスタートさせたスマホ放送局の最大の特徴は「無料放送」です(月定額制の動画配信サービス「Hulu」は月約1000円、「Netflix」は月最低650円)。スマホで専用アプリをダウンロードすれば、すぐその場で見始められます。ニュースやバラエティー、ドラマ、アニメなど現在21のチャンネルがあり、指でスワイプするだけでチャンネルを切り替えられるなど操作性のよさも売り。無料放送なので途中にコマーシャルが入りますが、テレビ朝日と組むことで番組出演者の質を高め、過去にテレビ朝日で放送されたバラエティーやドラマも見られるようになっています。アベマという変わった名前は、サイバーエージェントが手がけるブログ「Ameba」をひっくり返したものです。

 両社の提携は、サイバーエージェントが主導権を握っていると記事にあります。サイバーエージェントの藤田晋(すすむ)社長は、朝日新聞デジタルのインタビューでこう語っています。(全文は、会員登録すれば見られます)
 「我々が過半数を握らないと進まないですよ。意思決定の速度、ネットビジネスのスピード感、デバイスや環境が変わって朝令暮改で対応するのが日常茶飯事。そういうことに既存の放送界の人たちは不慣れだし、ネットの技術的なこともわかっていない」

 1998年の創業以来、インターネット関連広告事業からブログ事業、スマホ向けゲーム事業と主要業態をそれこそアメーバのように変化させてきた藤田氏ならではの発言ですね。同じ朝日新聞デジタルのインタビューでテレビ朝日の早河洋会長は、こう語ります。

 「インターネットのビジネスでは、どの放送局もリードしているとは言いがたい。『テレビがファーストメディアである』という意識をいったん捨てて、謙虚にインターネットビジネスの知見を学んだ方がいいのではないかと」

 好調をキープするテレビ朝日の要因の一端は、トップのこういった柔軟性と決断力にあるのかもしれませんね。

 新しい事業がスタートするときには、企業のトップが様々な媒体で思いや理想を語ることも多いもの。企業研究には最適の題材でもあります。朝日新聞デジタルに会員登録すれば、新聞本紙では見られない長めのインタビューも読めたりしますので、ぜひこの機会に活用を検討してみてください。

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