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2016年04月08日

有名人に選んでもらうユニクロの「ネット通販Tシャツ」、背景は?

アパレル・ファッション

毎月届く、あの人セレクト ユニクロ Tシャツをオンライン販売(2016年4月6日朝日新聞朝刊)

 ユニクロは、著名人が選んだTシャツがオンラインストアで買える通販を始めた。お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんやモデルの道端カレンさんら30人の著名人リストの中から、利用者が1人を選択。その著名人がユニクロのTシャツブランドUTの1200種類から選んだ5枚が、5~9月に毎月1枚づつ送られる。月額990円(税別)で送料無料。

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 この新基軸のTシャツ通販は「UT Picks」といいます。ユニクロはTシャツを「究極のベーシックカジュアル」と位置づけ、2003年から2500色柄を揃える「ユニクロTプロジェクト」を展開、その延長線上に出来たのが「UT」ブランドです。ディズニーとコラボしたり、フランスの著名デザイナーを起用したり……。色や柄、デザインの豊富さが“ウリ”でした。しかし、今回の「UT Picks」のニュースリリースでは、「デザインではなく『人』でTシャツを選ぶ」と唱え、「アーティストやモデル、ミュージシャン、アスリートなど、世界中から集結した各分野を代表する30名の『UT Picker』が、お客様の代わりにTシャツを選びます」と説明しています。

 ITの発達によって、情報量が爆発的に増え、まわりにたくさんの商品が溢れる状況。ユニクロの何千アイテムものTシャツも、その典型でしょう。博報堂の買物研究所ストラテジックプランニングディレクターの山本泰士さんは、こうした状況を「ある商品を『欲しい』と思っても、大量の情報と商品数の前でその欲求を十分に吟味することが出来ない。そして、その欲求は大きく育つ前に日々更新される情報に飲み込まれ、いつのまにか流されてしまう」と分析し、これを「欲求流去(よっきゅうりゅうきょ)」と呼んでいます。

 商品の選択肢が多いことを「ありがたい」と思っていた人びとが、選択肢の多さを「億劫だ」と、かえってストレスに感じるようになっているというのです。山本さんは、「顧客に『自分に合う』と思う情報をストレスなく提供し、大量の情報のなかで迷子にならず自分に合うモノがわかるようにする」ことで、このストレスは軽減されるといいます。そこで、UT Picksです。自分が憧れたり尊敬していたりする著名人が「これがイイ」と言ってくれるTシャツ。それがオンラインストアの画面を数回クリックすれば、自動的に5か月間、送られてくるのです。著名人が顧客の背中を押し、迷わず顧客の手が商品に伸びる……。欲求流去時代にモノを売るための工夫が、そこに見えてきます。UT Picksが思惑通りヒットするかは、これからですが、約30年前、アパレル製造・小売業の新しいビジネスモデルをつくり急成長を遂げたユニクロは、さすが消費者動向に敏感だと思わされます。就活生のみなさんも、日々のニュースの中から世の中の流れをつかんでください。

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