久光製薬、売上高また最高(2016年4月9日朝日新聞西部本社朝刊)
久光製薬(佐賀県鳥栖市)の2016年2月決算は、売上高が前期比3.3%増の1618億円と、15年連続で過去最高を更新した。更年期障害の治療薬などと並ぶ立役者は、主力の一般用湿布薬「サロンパス」。北米など海外で人気で、日本でも外国人観光客の「爆買い」の対象になっている。
久光製薬(佐賀県鳥栖市)の2016年2月決算は、売上高が前期比3.3%増の1618億円と、15年連続で過去最高を更新した。更年期障害の治療薬などと並ぶ立役者は、主力の一般用湿布薬「サロンパス」。北米など海外で人気で、日本でも外国人観光客の「爆買い」の対象になっている。
おなじみ、サロンパスが生まれたのは1934年。商品名は有効成分のサリチル酸メチルから取ったそうです。いまは化学合成されていますが、当初この成分は植物のカバノキから抽出されていました。
このサロンパス、中国のインターネット上で紹介された「日本で買うべき12の神薬」に入っています。2月19日の朝日新聞大阪本社夕刊には、「『神薬』効果で爆買い特需 製薬業界、喜びと不安」という記事がありました。この12神薬にはサロンパスのほか、「アンメルツヨコヨコ」(小林製薬)や「熱さまシート」(同)、「サンテ ボーティエ」(参天製薬)、「龍角散」(龍角散)など日本ではおなじみの大衆薬・家庭薬がならんでいて、大阪・道頓堀のドラックストアで薬を購入していた中国・重慶の女性は取材に対し「日本製は質が高いし値段もお得。たくさん買おうと思って来ました」と答えています。「中国で売っていないことや、安全安心という日本のブランドイメージが受けている」と記事では分析しています。
神薬のメーカーには、長年、日本人に親しまれてきた家庭薬の中堅メーカーが多いです。一般医薬品の国内市場は縮小傾向にありましたが、訪日中国人の需要は、まさに特需でした。冒頭の記事では「今期のサロンパスは、前期と比べると国内で17%、海外では11%も販売額が増えた」と指摘しています。湿布薬としての米国内のシェアは首位。日本の伝統薬が海外で高く評価されているのは、誇らしくもあります。
しかし、記事の末尾には、こんな指摘も。「営業利益は前期比35.1%増の277億円。ただ円高の影響で、純利益は同5.3%減の177億円だった」。また、久光製薬の決算と業績予測を見ると、サロンパスの日本国内での売上来期予測は87億円と今期から微増程度。特需を見込むというほど強気の数字とはいえません。冒頭の記事でも後半部分では「中国経済の先行き懸念は強まっている。足元で堅調な爆買いの流れは、急に変わるかもしれない」などと分析し、今期20億円の増収を見込むロート製薬・吉野俊明社長の「怖いねって(経営者同士で)話し合っている。ずっと続くと思うのは危険だ」というコメントも載せています。とかく「爆買い特需」のようなセンセーショナルなことばに引きずられがちですが、リアルなビジネスの世界は、もっとシビア。見出しだけに流されず、気になる業界・企業の記事は深く読み込んでください。
2024/11/23 更新
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