原発、狭まる情報公開 (2月5日朝日新聞朝刊)
電力会社が、原子力発電所の情報の公開範囲を狭めている。東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえてつくられた新規制基準にテロ対策が盛り込まれたためだが、規制当局が非公開を求めていない範囲まで制限する動きもある。
電力会社が、原子力発電所の情報の公開範囲を狭めている。東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえてつくられた新規制基準にテロ対策が盛り込まれたためだが、規制当局が非公開を求めていない範囲まで制限する動きもある。
技術と産業は、どのようなかかわりを持っているのか。それを考える格好の材料となる記事でしょう。「原子力発電」という技術が、これから産業としてどうなっていくのか。また、どうなっていくべきか。議論の大きなきっかけを与えてくれます。
記事によれば、いま電力会社は、原子力発電に関する情報の公開範囲を狭めているそうです。大丈夫でしょうか。他ならぬ電力会社にとって、それは大きなデメリットではないでしょうか。
考えてみてください。古今東西のあらゆる技術や製品のなかで、その仕様を秘密にしたまま、大きく普及をしたものがありますか?
テレビでも自動車でも、あるいはパソコンでも建築物でも。人々に幅広く受け入れられ、普及している製品はすべて、その仕組みや動作の条件といった「仕様」が公開されています。公開されているからこそ、さまざまな人が進歩や改良を加えられるし、よりよい製品を作り出していけるのです。自分も製品づくりに挑戦しようという気概だって生まれます。
ところが原子力発電は、みずからこの道を閉ざそうとしているようです。自分で自分の首を絞めている危険性が大きいと言わざるをえません。
どうですか? 秘密である技術や製品に、人は興味や関心を持ったり、自分も参加したいと思ったりできますか? あるいは、秘密にされている技術のミスや欠陥に、どうやって気づくことができるでしょうか? これでは「多くの人が参加することによって技術は発展できる」という歴史の貴重な教訓が、生かせなくなる恐れがあります。
日本原子力学会などを取材すると、当事者である原子力技術者自身が、このような危機感を強く抱き、深刻に議論している場面に出会います。記事も「電力会社は迷っている」と伝えています。まさに業界の岐路ともなる動きでしょう。
2024/11/21 更新
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