トヨタ、豪州生産撤退 (2月11日朝日新聞朝刊)
トヨタ自動車の豊田章男社長は10日、オーストラリア南東部ビクトリア州で記者会見し、2017年末までに豪州での生産をやめると発表した。豪ドル高や人件費の上昇で競争力が低下し、生産の継続は困難と判断した。日本などから輸出して現地での販売は続ける。
トヨタ自動車の豊田章男社長は10日、オーストラリア南東部ビクトリア州で記者会見し、2017年末までに豪州での生産をやめると発表した。豪ドル高や人件費の上昇で競争力が低下し、生産の継続は困難と判断した。日本などから輸出して現地での販売は続ける。
西欧を中心とする経済発展史を描き出した大著『地中海』など、壮大なスケールの仕事で知られる歴史学者のフェルナン・ブローデル。彼はかつて、こう喝破(かっぱ)しました。
「資本主義の本質とは、状況依存である」
大冊がずらりと並ぶ著作群のなかで、もっとも手に取りやすい一冊が、中公文庫版『歴史入門』です。その書名を「ブローデル入門」とも言い換えて良さそうな本書は、200ページにも満たない手ごろさながら、「市場経済とは」「資本主義とは」といったブローデル思想のエッセンスが、ぎゅっと詰まっています。
そのなかで、ブローデルは大意としてこう述べています。
「資本主義は、状況依存を本質とする。大きな利益が上がる領域は、絶えず変化をする。資本主義の強さの秘訣は、それに適応し、再転換をする早さである……」
さて、そこで今回の記事。まさにブローデルの指摘を地でいくような動きです。しかも主人公はトヨタ自動車。日本を代表する資本主義経済のチャンピオン企業が、大きな転換に踏み出しました。オーストラリアでの自動車生産から撤退するというのです。
かの国で、トヨタが自動車生産を始めたのは1963年でした。半世紀にも及ぶ歴史を背負い、ピーク時には年間15万台を生産していました。
しかもそのピークとは、わずか7年前のこと。撤退の理由は、為替の悪化や人件費の上昇などの「コスト高」ということですから、まさに急速な「状況変化」です。
「現地では衝撃が走っている」
記事も驚きに満ちています。これこそが資本主義の本質なのだと、ブローデルの声が聞こえてきそうです。
2024/11/21 更新
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