いつまでも正社員 介護大手「ケア21」 (12月3日朝日新聞夕刊)
介護サービス大手「ケア21」(本社・大阪)は来年度から従業員60歳の定年制を廃止する。65歳まで従業員の働く場の確保を義務づけられている企業の大半が、いったん退職させて給与を抑える再雇用制を選ぶなか、従業員数千人規模の企業としては異例の定年撤廃に踏み切る。
介護サービス大手「ケア21」(本社・大阪)は来年度から従業員60歳の定年制を廃止する。65歳まで従業員の働く場の確保を義務づけられている企業の大半が、いったん退職させて給与を抑える再雇用制を選ぶなか、従業員数千人規模の企業としては異例の定年撤廃に踏み切る。
高齢人口の増加を背景に、介護サービス業界では需要の拡大がつづいています。市場規模はこの10年間で倍増しました。しかし一方で、業界では人手不足が慢性化しています。
その原因となっているのが、介護職員の収入の低さでしょう。介護事業は、国の介護保険制度によって左右される要素が大きく、この介護保険給付費を抑制するという国の方針によって、老人ホームなどで働く職員の給与もかなり低く抑えられているのが現状です。市場が拡大しているのに、労働条件が改善されず、人手不足が続く……。そんな矛盾状態に陥っているわけです。
こうした中、注目されたのが今回の記事でした。大阪本社版の夕刊1面の記事で、いわゆる特ダネです。介護サービス大手のケア21が、定年制廃止を打ち出しました。2千人以上の従業員がいる大企業としては、異例の判断といえます。
「急成長する介護サービス市場には参入企業が相次ぎ、人材獲得競争が激化。ケア21は定年廃止により他企業との差別化を図る」
記事ではこのように、同社の考えを伝えています。新制度を定着させるために、管理職は65歳で役職を退き、若手に昇進機会を与えることも検討しているそうです。
ところで介護事業者の収入は、国の社会保障政策のもとで介護保険料と税金が基本となっているため、自前の努力だけでは収入増にも限界があります。どんなにサービスを工夫しても、従業員の大幅な給与アップなどは望みにくいのが現状です。
そこで介護事業者の中には、保険制度が適用されない新たなサービスに取り組む動きが出てきました。たとえば最大手のニチイ学館では、高齢者の深夜の徘徊を防ぐ見守りサービスを始めました。また、セントケアでは2014年1月から、高齢者の家事を代行する事業をスタートさせるそうです。
介護は今後ますます重要な分野となります。業界の新しい取り組みに、注目しましょう。
2024/10/04 更新
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