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2015年09月15日

ワタミ、介護事業を売却へ 業界の将来性をチェックしよう

介護・福祉サービス

ワタミの介護、苦渋の撤退へ (2015年9月11日朝日新聞朝刊)

 居酒屋チェーンのワタミが介護事業の売却交渉に入った。「ブラック企業」批判で収益が悪化し、苦渋の撤退を強いられる形だ。成長分野とされる介護事業には異業種企業の参入が相次いでいるが、人手不足などで事業に難しさも出てきている。
 「2年前までは業界トップクラスの入居率だったのに……」。ワタミ幹部はそう肩を落とす。
 居酒屋「和民」を中心に全国で500以上の飲食店を構え、上場企業の信用力も背景に「広告を打てばお客さんが来る状況だった」というワタミの介護事業。2004年に参入し、有料老人ホームや通所施設など125カ所を展開。利用者数を順調に伸ばしてきた。

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 「ワタミ」の介護事業はかつては稼ぎ頭で、2015年3月期の決算でも約24億円の黒字でした。ところが2015年4-6月期の決算は一転して7億円の赤字、記事にあるとおりワタミに対し「ブラック企業」との批判が高まってイメージが悪化、9割台だった入居率が78%まで落ちこみました。ワタミは主力の居酒屋「和民」も客離れが深刻で2期続けて赤字に転落、主要な取引銀行から財務の状況をよくするようプレッシャーを受け、稼ぎ頭だった介護事業の売却に踏み切らざるを得なくなったとみられています。

 介護業界そのものは高齢化が進み成長市場と目されています。現在の市場規模は10兆円ですが、2025年には倍の20兆円にふくらむという試算もあります。ワタミの介護事業買収に名乗りをあげているのは損保大手の損保ジャパン日本興亜HD。介護サービス大手「メッセージ」への出資など、業界への進出をすすめています。その他、パナソニックやイオン、ゼンショーHDなども業界に参入してきています。

 とはいえ介護業界を支えるのは国の介護保険で、介護報酬は国の財政難もあり今後も切り詰められていくことが予想されます。ワタミの主力事業だった有料老人ホームは相次ぐ企業の参入や比較的安価な「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)が普及してきたこともあり、競争は激化。ワタミも低価格帯の老人ホームやサ高住の展開を模索しているところでした。今後ビジネスとして成立させるためには、介護保険でカバーされている以外のサービスをつけて差異化をはかっていくしかないとこの記事で専門家は指摘しています。

 介護についてはピンとこない人もたくさんいると思いますが、高齢化が追い風となる稀有な業界でもあり、今後は世界展開も見込める面白いビジネス分野だと思います。他方、人件費の安さや過酷な職場環境など問題点も多数指摘されています。福祉業界に興味のある方はぜひ幅広くニュースをチェックしてください。

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