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2015年09月11日

三井住友海上が買収、英国「保険会社が顧客の保険会社」って?

銀行・証券・保険

「保険会社の保険」強化/三井住友海上6350億円で英王手買収(朝日新聞9月9日朝刊)

 MS&ADインシュランスグループホールディングス傘下の損害保険大手・三井住友海上火災保険が英国損保大手アムリンを買収し、完全子会社にする。アムリンは比較的もうけが大きい再保険や小型船舶の保険に強い。MS&ADの売上高にあたる正味保険料はこれで3兆3578億円になり、日本で首位の東京海上HDに迫る。

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 記事にある「再保険」とは、震災や航空、海難事故などが万一発生し巨額な保険金支払いが必要になっても、それにちゃんと応えられるように保険会社が掛ける保険のことです。保険会社のリスクヘッジ(危険を避ける)をするわけですから、それなりの保険料を取らないと割にならないので、「もうけが大きい」というわけです。半面、リスクが大きいだけに一つ間違えれば大きな損失を被るので情報収集・分析力が必要で、そう簡単に手を出せない分野ともいえます。

 ロンドンには、こうした高リスク案件を引き受けるロイズという保険引受市場があります。歴史は古く17世紀にエドワード・ロイド氏が経営するコーヒー・ハウスに遡ります。そこが保険業者のたまり場になり、情報交換や取り引きが行われました。いまも、ロイズ保険市場にはアンダーライターという出資者たちが登録され、彼らはいくつものシンジケートに組織されて、そのシンジケートがそれぞれ得意分野のリスクを引き受けています。アムリンは1930年創業の老舗損保会社。もちろんロイズのメンバーであり、ロイズで有数のシンジケートを持っているといいます。

 このところ日本の損保による派手な海外展開が話題になります。今年3月には、損保ジャパン日本興亜がフランスの再保険会社スコールに約1100億円を出資すると表明、6月には東京海上HDが米国の保険会社HCCインシュアランスHDを約9400億円で買収すると発表しました。朝日新聞の三井住友海上火災アムリン買収の第一報は9月8日でしたが、その記事では、日本の損保会社の“お家の事情”として、
・若者の車離れに加え、高齢者の事故が増えて主力の自動車保険の収支が悪化
・自然災害が増えていて、支払いリスクが高まっている
の2点をあげて、国内損保の積極的な海外展開を解説しています。

 自動車保険のテレビCMはおなじみですが、どうやらこうした国内の個人顧客向けBtoCビジネス頼りでは損保会社は成り立たない時代のようです。損保会社のグローバル化、企業同士のBtoBビジネスに注目してください。

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