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2015年09月18日

回転ずしの「かっぱ寿司」が「回らない寿司店」 ナゼだ?

外食

おすしは回らず 特急便/かっぱ寿司導入 他社も (朝日新聞2015年9月16日朝刊)

 回転ずし業界で「回らない回転ずし」の出店が相次いでいる。「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトホールディングス(HD)が回転レーンのない新型店「鮨ノ場」(すしのば)を東京・青山に開く。約100種のすしの中には、アスパラやオクラなど野菜のすしも。従来の郊外型の「かっぱ寿司」店より小ぶりで、家賃の高い首都圏の駅前に5年で100店を出す。タッチパネルで注文すると、すしがベルト式の高速レーンにのって席まで届く。

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 へえ? おもしろそうだな、行ってみようかなと、思わせる記事ですね。記事では従来型の「回る」寿司では、目当てのすしが回転レーンに並んでいても鮮度を求めて新しいすしを求めるお客が増えていたため、全品オーダー型を採用したと説明しています。またこの方式だと、すしの廃棄量も減ると指摘しています。

 では、カッパ・クリエイトHD側の事情はどうでしょう。ネット検索で調べると、回転ずし大手5社だけで全国1500~1600もの店舗が“ぐるぐる”回っているようです。これまでの回転ずしは主に郊外に100席以上の大型店を展開して「1皿100円」と銘打ち、安さと早さでファミリー層から人気を集めていました。もともと薄利で、多くのお客をさばくために工夫したのが、お客の目の前をコンベアに載ったすしが回るアイデア。ところが2014年4月の消費増税、さらに円安に加えて世界的なすしブームで、輸入魚介類の値段が高騰しました。

 朝日新聞2014年12月24日朝刊は「サーモン 跳ね上がる価値/輸入価格 2年で1.5倍」と報じています。この記事によると、ある水産会社のすしネタの調査では、お客の2割が注文するマグロ(赤身)や、同じく2割のハマチ・ブリを大きく引き離して、サーモン(サケ・マス類)は4割でした。そのサーモンが値上がりしているのです。安さで売る回転ずしでは、おいそれと価格転嫁できません。各社は、切り身を薄くするなどの工夫をしたようですが、お客も薄くなれば気づきますよね。

 こうした状況では、大手の中でも安さをセールスポイントにするより、“プチぜいたく”感をアピールするチェーンの方が売り上げを伸ばしているようです。従来は安さ重視だったカッパ・クリエイトHDですが、ホームページで決算状況をみると2015年3月期の売上高は876億6431万円ですが、純損失は134億5527万円と、3期連続の赤字でした。2014年にはカッパ・クリエイトHDを、外食グループのコロワイドが300億円で買収し子会社化しました。コロワイドは居酒屋「甘太郎」や牛肉の「牛角」で知られていますね。傘下にマグロなどを扱う水産会社も持ち、仕入れにも有利なのだそうです。

 「鮨ノ場」は、これまで回転ずしチェーンの主戦場だった郊外ではなく、都市部の駅前に出店する計画です。客席は大型店の半分から3分の1程度。完全オーダー制に加え内装も含めて高級感を演出し、客単価も1.5倍の1500円くらいに設定しています。安さを追求する上で生まれた「回転ずし」でしたが、そのビジネスモデルを転換する時期に来ているということでしょうか。とすれば、確かに、かっぱ寿司がテレビCMで打ち出している「かっぱの改新」ですね。食いしんぼうから経済記事に興味をもつのは、とてもよいことです。それから一歩踏み込んで業界研究をしてみましょう。

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