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2022年07月01日

電子コミックで復活!出版業界 編集だけじゃない多様な職種【業界研究ニュース】

マスコミ・出版・印刷

 出版業界の就活人気が上がっています。あさがくナビの2023年卒生を対象にした就職人気企業ランキングでは、講談社が2位、集英社が3位に入りました。講談社は前年の4位から、集英社は前年の11位から躍進しました。ほかにも KADOKAWA が12位、小学館が43位に入るなど、出版社人気が目立っています。出版業界はインターネットの登場以来、主力だった紙の雑誌の売れ行きが落ち、業界は縮小傾向が続いていました。しかしここにきて、電子書籍、中でも電子コミックの伸びが著しく、2020年には出版業界の売上高が久しぶりにプラスに転じました。まだ主力は紙の書籍や雑誌ですが、紙の落ち込みを小さく抑えて電子出版が順調に伸びれば、業界は成長するという見通しが立ちつつあります。電子出版の中でも電子コミックは世界をマーケットにすることもできるため、これからの業界は国際性も帯びてくるはずです。ただ、出版社は人気や知名度が高い一方、規模の小さい業界です。大手でも採用人数は少なく、狭き門です。志望する人には十分な業界研究と熱意が必要だと思います。

電子コミックが伸びて、プラスに転じる

 出版科学研究所によると、2021年の日本の出版物の推定販売額は1兆6742億円です。販売額がピークだったのは1996年で2兆6564億円でしたから、それに比べると1兆円近く減っています。インターネットが登場したことに伴って紙の雑誌が読まれなくなったことが減少のもっとも大きな原因です。ただ、2010年代になって電子出版の売り上げが伸びできて、2020年にはついに出版物全体の販売額が前年比プラスに転じ、2021年にはそのプラス幅が大きくなりました。復活の立役者は明らかに電子出版で、その販売額は年々伸びて2021年には全体の27.8%を占めるまでになりました。中でも目覚ましい伸びを見せているのが電子コミックで、電子コミックだけで全体の24.6%を占めています。大まかにいうと、雑誌は低落傾向が続き、書籍は横ばい。電子コミックが大きく伸びて、全体がプラスになってきたという状態です。

集英社、講談社、小学館が大手3社

 出版業界の売り上げが長く減少していたため、出版社の数は徐々に減り、今は3000社弱となっています。1兆6742億円の売上高の業界に3000弱の会社があるということは、1社平均の売上高を計算すると、5億円台半ばとなるので、中小企業が多い業界であることがわかります。業界で売上高が大きいのは4社です。KADOKAWAが2212億円(2022年3月期)、集英社が2010億円(2021年5月期)、講談社が1707億円(2021年11月期)、小学館が1057億円(2022年2月期)です。この4社を大手とよぶ場合がありますが、KADOKAWAはゲーム事業や教育事業にも力を入れていて出版専業ではないため、集英社、講談社、小学館を大手3社とよぶのが一般的です。この3社はいずれも電子コミックにも強いため、最近好調です。出版業界には非上場の会社が多いことが特徴です。大手3社も上場していません。編集方針に株主が影響を及ぼすことを嫌うことなどが理由とみられます。

再販制度と委託販売制度

 出版社の仕事といえば、本や雑誌の編集というイメージが強いでしょうが、販売、広告、宣伝、制作、広報など職種はたくさんあります。出版業界は販売に特徴があります。出版物には「再販制度」と「委託販売制度」というふたつの特殊な制度があるためです。再販制度というのは、出版社が定価を決めて書店は定価で売らないといけないというルールです。売れないからといって書店が勝手に値引きして販売することはできません。新聞や出版物は活字文化の向上のためになくてはならないものということで、安定した販売のために決まっています。委託販売制度は、書店が本や雑誌を買い切るのではなく、売れ残った本や雑誌は出版社に返品できるというルールです。この二つの制度は出版社には定価で売ることができるメリットがありますが、売れなければ返品を抱えるというリスクがあります。つまり、印刷部数や定価が業績に大きくかかわることになります。多くの出版社では印刷部数や定価を販売部が決めることになっているため、販売の責任も大きくなります。

大手3社と丸紅が出版流通改革へ

 この出版流通の改革に名乗りを上げたのが総合商社丸紅です。今年3月、出版大手3社などとの共同出資で新会社「PubteX(パブテックス)」を設立。タイトルごとの発行、配本部数の推奨値をAI(人工知能)で算出し返品率の抑制を目指します。出版業界の返品率は3~4割の水準で推移しており、パブテックス社は毎年約2000億円の損失が生まれていると試算。同社の永井直彦社長は「サプライチェーンの効率化に強みのある商社の機能を生かして、出版業界の持つ課題解決のお手伝いをしたい」「業界の大手3社が取り扱うコンテンツには更に大きなチャンスがある。たとえば海外展開なら商社には経験や現地有力企業との関係などの蓄積がある。様々な可能性があると思っています」と話します。

編プロやフリーも関わる

 出版業界には、編集プロダクション(編プロ)という業態の会社があります。自前の本や雑誌を出すことはありませんが、雑誌の連載企画を請け負って、原稿を書いたり編集をしたりします。また、書籍の企画や編集をする場合もあります。出版社の下請け的存在ですが、評価の高い編プロはいくつもの出版社が頼りにする存在です。出版社を志望したものの採用されなかった人の中には、編プロに入って編集や原稿執筆の経験を積んでから出版社に入る人も少なくありません。ほかにもフリーのライターや編集者も業界にはたくさんいて、出版社員ではない人もたくさん関わっている業界と言えます。

市場を世界に求める時代へ

 出版業界の復活は電子コミックが支えています。書籍や雑誌は活字中心なので、市場は基本的に国内です。しかし、電子コミックは絵が中心で活字は少ないため、工夫すれば、市場は世界に広がります。日本のコミックのレベルは高く、海外でも人気があります。最近の日本の電子コミックは縦読みのレイアウトが主流になるなど、読者のニーズにあわせて進化しています。市場を世界に求めて挑戦する時代になっています。

(写真は、縦スクロールマンガの原稿の校閲作業をする編集者=東京都品川区の制作会社「ソラジマ」)

本や雑誌がすごく好きであること

 出版業界を目指す人は、本や雑誌が好きな人だと思います。ただ、そういう人は世の中にたくさんいますので、「すごく好き」であること、そして「入って何をやりたいか」がはっきりしていることが大切だと思います。また、コミュニケーション能力も大切です。たとえば、本の編集者になったとすると、作家に必要とされる人にならないといけません。作家をいい気持にさせる行動や会話も必要ですし、行き詰まった時の的確なアドバイスや調べものも必要です。何より「素晴らしい原稿を早く読みたい」という気持ちが伝わる熱意が必要です。雑誌の編集者だと、社会を知るアンテナを張っている必要があり、そのためにもコミュニケーション能力が大事になります。本や雑誌がすごく好きでコミュニケーション能力にも自信のある人にとっては、とても魅力的な業界だと思います。

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