火力発電や原子力発電の比率を下げて再生可能エネルギーの比率を高めようという動きが世界的に進んでいます。再生可能エネルギーの2本柱は太陽光発電と風力発電ですが、日本では太陽光が主力で、風力はあまり伸びていませんでした。特にヨーロッパで主力になっている洋上風力発電の導入は遅れています。しかし、昨秋に成立した洋上風力発電法によって、事業者が洋上風力を設置しやすくなりました。日本でもこれから洋上風力を中心に風力発電が盛り上がっていくとみられます。しかし、大手風車メーカーは欧米企業が強く、日本メーカーは脇役に甘んじています。ただ、風力発電は数多くの部品を使うため、日本の部品メーカーや電気事業者にとってはビジネスチャンスと言えます。風力発電の将来性に注目しましょう。
(写真は、デンマークの洋上風車大手MHIヴェスタスが英北部で建設した洋上風力発電所=同社提供)
洋上では巨大風車でコスト減
日本の風力発電は、日本の総発電量の1%にも届きません。しかし、世界全体では風力発電は4%近くになっていますし、デンマーク、ポルトガル、スペイン、ドイツ、イギリス、スウェーデンといったヨーロッパの国では2ケタの割合となっています。ヨーロッパの国々で急激に増えているのが、洋上風力発電です。陸上では、風が強く人が住んでいないという風力の適地は限られますが、ヨーロッパには遠浅の海が多く洋上には適地が広がっています。洋上では1基を巨大にすることも可能で、今は直径200㍍近い巨大な風車を設置することもできるようになっています。風は高いところほど強く吹くため、風車を高く設置すればするほど効率は良くなります。このため、風力発電のコストはどんどん下がり、今では風力が様々な発電方法の中で一番安いレベルにまでなっています。
洋上に投資する環境整う
四方を海に囲まれた日本も洋上風力発電に向いているはずですが、これまでは実験レベルでした。事業者が海面を占有する仕組みがなかったため、投資できない状態が続いていたのです。しかし、政府も風力発電の必要性を強く感じるようになり、国が区域を指定し、その区域では事業者が最長30年間占有できる法律ができました。これで事業者が洋上風力に投資する環境が整ったため、国内外の風力発電に関わる企業が熱い視線を送るようになっています。
三菱重工、日立、東芝は出資や販売
風車のメーカーは、欧米が主力です。シェアトップはデンマークのヴェスタス、2位は中国のゴールドウインド、3位はアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)です。洋上風力に限れば、トップはドイツのシーメンス、2位はデンマークのMHIヴェスタス、3位はGEとなっています。日本メーカーは、三菱重工業がMHIヴェスタスに出資して参入しています。日立製作所は1月、自社生産から撤退し、提携するドイツのエネルコンの製品の販売と保守サービスに専念すると発表しました。東芝はドイツのセンビオンと組んで同社の風車を日本で発売します。つまり、風車本体については、欧米メーカーが主役で、日本メーカーは出資や販売でかかわっているわけです。
(写真は、北九州港に入港した洋上風力発電を設置するのに必要な国内初のSEP〈Self-Elevating Platform〉船=2019年2月14日 )
2万点もの部品を使う
ただ、風力発電は1基あたり2万点もの部品が必要なすそ野の広い産業です。ガソリン自動車が3万点、電気自動車は1万点と言われますから、風力発電の部品はかなり多いと言えます。日本風力発電協会に加盟している会社は388社(16自治体含む)に上ります。ベアリング、エレクトロニクス部品、ソフトウエアなどいろいろな部品メーカーが入っています。欧米メーカーが日本で本体の風車を設置するとしても、部品は日本企業からかなり調達するとみられ、業界が潤うことは間違いありません。また、陸上に設置する小規模な風力発電メーカーは日本にたくさんあります。
2050年度までには20%以上を風力で
地球温暖化対策から火力発電は減らさざるを得ず、安全性の面から脱原子力発電の流れは止まりそうにありません。再生可能エネルギーを伸ばすとなると、ポテンシャルがもっともあるのは風力発電とみられています。日本風力発電協会は2050年度までには日本全体の発電量の20%以上を風力でまかなうという目標を掲げています。洋上に巨大な風車が立ち並んでいる光景が珍しくなくなる時代が近づいています。伸びゆく風力発電に関わる仕事も面白いと思います。
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