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2018年07月18日

「空飛ぶクルマ」も夢じゃない!?可能性秘める航空機産業

自動車・輸送用機器

 世界最大級の航空ショー「ファンボロー国際航空ショー」が開かれていることもあって、航空関係のニュースが増えています。三菱航空機が開発している国産初のジェット旅客機「MRJ」は初めてのデモ飛行を成功させました。スバルは新しい民間向けのヘリコプターを世界各国で売り出すと発表しました。スバルの民間用ヘリの発売は1995年以来のことです。ホンダはアメリカで開発した小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」を日本でも販売すると発表しました。いずれも最近のニュースです。日本の航空機産業は、戦後いったん解体され、復活しても基本的にアメリカの下請けに甘んじていました。今も欧米に大きく引き離されていますが、最近になって自前のジェット機やヘリコプターを生産するようになり、その差を縮めようとする動きが見られます。その先には、宇宙開発や空飛ぶクルマなど、これから花開く航空宇宙産業の新時代を見据えています。

(写真は、デモ飛行をする三菱航空機のジェット旅客機「MRJ」)

「2020年に2兆円」が目標

 日本の航空機産業は、三菱重工業、川崎重工業、スバルの3社が引っ張ってきました。戦前、三菱は戦闘機の「ゼロ戦」を、川崎は「飛燕」などを、スバルは前身の中島飛行機が「」を作っており、その流れをくんでいます。今もこの3社は社内に航空宇宙部門をもち、飛行機、ヘリコプター、ロケットなどの製造をしています。ほかにも新明和工業、日本飛行機が機体づくりのメーカーです。エンジン部門では、IHIが日本の中心的なメーカーとなっています。ホンダもホンダジェットを販売する航空機メーカーですが、開発製造拠点がアメリカにありますので、国産メーカーには含まれません。日本の航空機産業の市場規模は1兆数千億円ですが、経済産業省は2020年には2兆円にするという目標を立てています。

(写真は、スバルが米国企業と共同開発した新型ヘリ「412EPX」=スバル提供)

期待のMRJは正念場

 日本の航空機産業は第2次世界大戦の敗戦で大きなダメージを受けました。進駐軍からは製造禁止令が出て、1952年の講和条約発効で復活しました。1960年代には国産のプロペラ旅客機「YS11」を開発製造し、182機が世界の空を飛びました。しかし、国産旅客機はYS11で途絶え、日本の航空機産業はアメリカのボーイング社などの下請けの役割に長く甘んじてきました。下請けからの脱皮をかけたのが、三菱重工業が開発中の国産ジェット旅客機MRJです。2008年に開発に着手し、2013年から納入を予定していたのですが、5度の延期を重ね、現時点では2020年納入予定まで延びています。1千億円台を見込んでいた開発費は膨らみ、これまでに投じた資金は6千億円に上ります。三菱にとってはこれ以上延期できない正念場に来ています。

(写真は、愛知県豊山町のあいち航空ミュージアムに展示されているYS11)

ホンダは日本に逆上陸

 MRJが苦労している間に、ホンダは2012年にアメリカの工場で小型ビジネスジェット機の生産を始め、2015年から欧米を中心に販売してきました。2017年の出荷数は43機で、小型ジェット機としては世界一となりました。日本でもIT長者などの需要が見込めるとみて、販売を始めることにしました。

(写真は、ホンダジェットの室内)

ボーイングとエアバスが2強

 世界の航空機メーカーは、アメリカのボーイングとヨーロッパのエアバスが2強です。特に大型旅客機は2社の寡占状態にあります。ただ、これからは地方と地方を結ぶ中小型旅客機の需要が増えるとみられていて、2強はこの分野にも力を入れて、陣営づくりを急いでいます。旅客機以外でも航空産業には軍用機やヘリコプターがありますが、この分野も欧米メーカーが力を持っています。

「空飛ぶ乗り物」の将来性は大

 航空機産業には大きな将来性があると見られています。グローバルに人や物が動く社会はますます進むと予想され、移動には航空機が欠かせません。「空飛ぶ乗り物」という大きなくくりでとらえると、さらに可能性が広がります。宇宙開発が進み、人が宇宙旅行をする時代はそう遠くないでしょう。ロケットや宇宙船づくりは航空機産業の出番です。渋滞知らずの「空飛ぶクルマ」の研究開発も進んでいます。自動車メーカーだけでなく、航空機メーカーも開発に動いています。日本は決して強くありませんが、航空機産業はとても夢のある産業です。就職先として航空会社が人気ですが、航空機メーカーにも目を向けてみてはどうでしょう。

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