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2018年01月17日

アメリカ自動車業界にバブル到来?

自動車・輸送用機器

 アメリカの自動車の街デトロイトで開かれる北米国際自動車ショーは、世界で最も注目を集める自動車ショーです。アメリカの自動車メーカーが目先、力を入れる車種や技術がよく分かるのが特徴です。「今年は大型ピックアップトラック推し」だそうです。ピックアップトラックはアメリカの中南部で人気がある荷台つきの大型自動車です。トラックとしての使い方だけでなく、乗用車としても使われます。燃費は悪く、値段も高い車ですので、この車種が売れるのは、景気が加熱している時だと言われます。アメリカでは、10年前のリーマンショックの前によく売れていました。「アメリカはバブっているのではないか、では日本も」という連想が働いてきます。

(写真は、北米国際自動車ショーでGMが発表したピックアップトラック「シボレー・シルバラード」=2018年1月16日撮影)

1台で110万円もうかる

 昨年のアメリカ自動車市場は、8年ぶりに縮小しました。しかし、ピックアップトラックやスポーツ用多目的車(SUV)は4%増えました。ピックアップトラックは日本円にして500~1000万円くらいのものが多く、自動車メーカーは1台売れば1万ドル(約110万円)はもうかると言われています。だから、売れるときには売りたいと思う車種です。

(写真は、フォードのピックアップトラック「F150」=2018年1月16日撮影)

2005年もピックアップトラック推し

 2005年にあった北米国際自動車ショーについての朝日新聞の記事は「日米攻防 トラックに力・環境を重視 北米自動車ショー」という見出しになっています。アメリカの自動車メーカーが死守したいピックアップトラック市場にトヨタ、ホンダ、三菱自動車が参入して、双方がぶつかっているという様子が書かれています。当時のアメリカは、バブルのマグマがたまりつつある好景気の時代でした。アメリカ人は、ガソリン代を気にせず大きな車を乗り回すことで、好景気を謳歌していたわけです。

(写真は、トヨタのピックアップトラック「タコマ」=2015年1月13日撮影)

トヨタが悔やんだ投資

 この流れに乗ってトヨタは06年、テキサス州にピックアップトラックを生産する工場を作りました。しかし、その頃から原油価格が急上昇し、燃費の悪いピックアップトラックは徐々に売れなくなりました。そして08年にアメリカ経済のバブルがはじけ、世界は経済危機に見舞われました。リーマンショックです。大赤字となったトヨタは、ピックアップトラックに大きな投資をしたことをその主な原因として悔やみました。

リーマンショック前の風景と似る?

 あれから10年、リーマンショックを克服するために世界は金融を緩和して景気をよくしようと頑張ってきました。そして再び、北米国際自動車ショーでピックアップトラックが主役となる時代になってきたのです。しかし、現在、原油価格が徐々に上がり始めています。ニューヨーク株式市場の株価もほぼ一直線に上がっています。何やらリーマンショック前の風景と似てきたと思いませんか。

「バブルかも」という警戒心必要

 日本では、30年ほど前のバブル経済の時代に高級乗用車がよく売れました。日産自動車の「シーマ」が代表格で、500万円以上する高級車が飛ぶように売れる様を「シーマ現象」と呼びました。今、そんな現象は見られません。2017年の国内新車販売ベスト10には、軽自動車が6車種も入り、それ以外も値段の高くない小型車やハイブリッド車です。ただ、気になる点はあります。日本の株式市場も上がり続けています。バブル期以来低迷していたスキー人気が盛り上がりつつあるという話も聞きます。バブル期に流行した歌やダンス、ファッションなどがまた流行っています。バブルを検証する本がいくつも出版されたのも、ここ1、2年です。バブルの最中には人はそれをバブルとは思わないものです。「こんなに景気がいいのはステージが変わったのだ」と思って異常な値上がりや異常な浮かれようを納得させてしまいます。自動車業界だけでなく、すべての業界で「今はバブルかもしれない」という警戒心を持った方がいいと思います。

(写真は、バブル期に流行した日産「シーマ」=1988年12月ごろ撮影)

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