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2018年01月10日

輸出で攻めるコメ業界 商社志望者も注目!

食品・飲料

 今年からコメの減反政策がなくなります。作りすぎて値段が下がることを防ぐために長く続いてきた政策ですが、これからは農家が自由にコメを作ることができるようになります。作りすぎの心配については、政府は輸出を増やして乗り切ろうと考えているようです。今、日本のコメの輸出量はかなりの勢いで増えています。粘りけがあっておいしいという評判も立っています。農林水産省は、コメとコメ加工品の輸出を3年で4倍に増やす挑戦的な計画を立てています。アジアの経済成長とともにコメは日本の有望な輸出品になるとみているようです。農家や農業法人だけでなく、コメ卸業者や商社などがコメ輸出に力を入れ始めています。

(写真は、シンガポールの商業施設にある日本米のおにぎり専門店「サムライス」=2017年12月20日撮影)

守りから攻めの産業政策に

 減反政策はコメ余りが目立ってきた1971年に始まりました。各農家に作付けする田んぼの面積(反)を減らす割り当てが行われたので、減反という名称になりました。しかし、食生活が豊かになるにつれ日本人1人あたりのコメ消費量は減り続け、今ではピークだった1962年の半分以下になっています。最近では人口も減っていることから、毎年8万トンほど国内のコメ消費量は減っています。そうした中で減反のような「守りの政策」は限界にきていました。これからは、自由に作って生き残った農家や農業法人が規模を大きくして輸出にも力を入れるという「攻めの産業政策」に農水省が切り替えたわけです。

(写真は、シンガポールに2017年末に進出した「ドン・キホーテ」で売られている日本米=2017年12月18日撮影)

2019年に10万トン輸出

 農水省が昨年発表したコメ・コメ加工品の輸出計画では、2019年に16年の4倍にあたる10万トンにすることにしています。16年までの5年間でも5倍近い伸びを示しているのですが、それにさらにドライブをかけようという計画です。背景にはもちろん減反政策の廃止があります。これくらいの計画を達成しないと国内でコメが余って値段が下がってしまうと考えているわけです。

(グラフは、日本米の海外輸出量と輸出先)

現地の豊かな人たちにも

 世界で食べられているコメには大きく分けて2種類あります。細長くてパサパサしているインディカ米(長粒種)と短くて粘りのあるジャポニカ米(短粒種)です。日本で栽培しているジャポニカ米は主に中国、韓国、台湾、アメリカなどで食べられています。世界のトップを争う輸出国のタイやインドはインディカ米がほとんどです。このため、現在の日本の輸出先は、香港、シンガポール、台湾、アメリカの順になっています。買うのは現地に住む日本人や日本食レストランだけでなく、現地の豊かな層の人たちにも広がりつつあります。

(写真は、タイやインドなどで食べられている細長いインディカ米)

米輸出関連業界に成長の可能性

 味覚は習慣によってつくられますから、インディカ米を食べている地域にジャポニカ米を広めるのは簡単ではありません。ただ、こうした地域から日本にやってくる観光客は増えていて、日本のコメを食べています。カレーやピラフにはインディカ米があうと言われますが、おかずと一緒に食べる主食にはジャポニカ米がおいしいと感じる人もいるでしょう。日本の農家や農業法人の生産性が上がって値段がもっと安くなれば、インディカ米地域にも進出できる可能性があると思います。また、日本酒やせんべいなどのコメ加工品の人気も海外で上がっているようです。コメ輸出に真剣に取り組んでいる農業法人やコメ卸業者、商社など関連業界はこれから成長する可能性があります。

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