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2017年10月18日

企業の不祥事は、発覚後の対応に注目!

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神戸製鋼、データ改ざんで窮地に

 神戸製鋼所が鉄、アルミ、銅などの製品の検査データを改ざんしていた問題は、神戸製鋼の経営に大きな影響を与えそうな雲行きになっています。最初の記者会見では否定していた鉄製品でも改ざんがあったことが分かるなど、会社への信用が崩れる展開になっています。アメリカ司法省が動き出したのも、こうした経緯に悪質性を感じたからかもしれません。日産自動車は完成車の検査を無資格者にさせていた不祥事が発覚しましたが、発覚後も無資格者にさせていたことがわかり、問題が大きくなっています。企業が起こした不祥事はそれ自体が批判されるべきものですが、発覚後の対応の善し悪しによって企業のダメージは何倍にも何分の1にもなります。倒産したエアバッグメーカーのタカタや窮地に追い込まれている東芝などは、対応に失敗した例だと思います。就活生は企業をみる際、不祥事そのもの以上にその後の対応をみるといいと思います。不祥事を起こした企業でも対応がよければ、志望企業から外す必要はないかもしれません。
(写真は、アルミや銅製品をつくる神戸製鋼所長府製造所。性能データの改ざんが行われていた=2017年10月11日撮影)

神戸製鋼問題が深刻な5つの理由

 神戸製鋼のデータ改ざん問題が深刻な理由は5つあります。まず、製品、納入企業が広範であることです。鉄、アルミ、銅、光ディスク材料などで行われており、国内外の少なくとも500社以上の企業に納入していたことが分かっています。2つ目は改ざんをしていた期間が長いことです。副社長は記者会見で「10年近く前から」と言っていますが、「もっと前から」というOBの声もあるそうです。3つ目は組織ぐるみだということです。品質管理の担当者まで改ざんに加わっていたということで、会社も「組織ぐるみ」を認めています。4つ目は似たような不祥事が過去にもあることです。2008年には子会社が鋼材で義務づけられた試験をせずに出荷していた問題が発覚、2016年にはグループ会社で鋼材の強度のデータを改ざんしていたことが発覚しています。5つ目が発覚後の対応のまずさです。10月8日に記者会見した副社長はデータ改ざんについて、アルミや銅製品の一部で行われたこと、法には触れないことなどを公表しました。しかし、11日になって鉄粉や合金などでもデータ改ざんしていたことを常務が記者会見して認めました。社長が記者の取材に応じたのは、その翌日の12日のこと。「信頼はゼロに落ちた」と反省の言葉を述べました。このいきさつは典型的な後手後手の対応で、最初から社長が記者会見をし、分かっている限りの不正をすべて公表し、深い反省の言葉を述べていたら、展開は違ったと思います。
(写真は、記者会見で頭を下げる神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長=手前と、勝川四志彦常務執行役員=2017年10月13日撮影)

東芝は守りの対応に終始

 会社の存亡さえ心配される事態になっている東芝も、対応に問題がありました。会計操作によって利益を水増ししていた不正会計から始まり、買収した原子力発電関連メーカーのウェスティングハウス(WH)を高値づかみした損失、WHが米国で受注した原発建設のコスト増による損失などが次々に明らかになり、その都度、有望事業の切り売りで逃れるという守りの対応に終始しました。もっと強い危機感を持って、膿を一挙に出す覚悟があればここまで追い込まれることもなかったでしょう。
(写真は、東京・港区の東芝本社ビル)

社長が説明しなかったタカタ

 世界最大のエアバッグメーカーのタカタは、6月に民事再生法を申請して倒産しました。タカタ製エアバッグの異常破裂によってアメリカで死者が出たのが2009年。以来、世界で17人の死者が出たのですが、タカタはきちんと対応せず、社長が公の場で説明することもありませんでした。1兆円もの負債を抱えて倒産した日に、社長はようやく記者会見を開き、「なぜ問題が起きたか不可解」と悔しそうに語ったと言います。もっと早く社長自らが指揮を執って解決に動けば違った展開になったと思います。
(写真は、記者会見で謝罪するタカタの高田重久会長兼社長=中央、2017年6月26日撮影)

窮地の時こそ会社の本性見える

 トヨタは2010年、車の急加速による死亡事故が起きていることをアメリカで問題視されました。就任して間もない豊田彰男社長はアメリカ議会に呼ばれ、追求されました。議会やメディアの追求に逃げ隠れせず真摯に対応したこと、素早く大量リコールをしたことなどから、アメリカでのトヨタ批判は徐々におさまりました。発覚後の対応に比較的成功した例です。ただ、こうした例はそう多くはありません。後手後手に回って隠蔽体質がみえたり、十分な説明をせず傲慢な印象を与えたりするケースのほうがずっと多いように感じます。人間でも会社でも窮地に陥ったときに本性が出ます。そういうときこそ、社内の風通しの善し悪しや社員の意識などがよく見えます。会社を見る目を養うためにも企業の不祥事対応に注目するといいと思います。

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