新しい&懐かしいの両面作戦
ダイハツ工業は、27日から開かれる東京モーターショーに小型4ドアクーペの試作車「DNコンパーノ」を出品します。クーペはスポーティーなスタイルで、後部座席がなかったり狭かったりする乗用車のタイプをいいます。最近ではほとんど聞かなくなった言葉ですが、昭和の頃は若者の憧れでした。こうしたかつて一世を風靡(ふうび)した商品を復活させようという動きは、あちこちであります。来年誕生60年を迎えるホンダの「スーパーカブ」や、今年誕生80年を迎えるサントリーウィスキーの「角瓶」なども、メーカーが力を入れている商品です。まったく新しいモノを開発する一方、懐かしいヒット商品のリバイバルを目指す両面作戦がメーカーには求められるようです。
(2017年10月11日朝日新聞デジタル)
(写真は、ダイハツが出品する「DNコンパーノ」。フロント部分がクラシカルなデザイン=ダイハツ工業提供)
1960~80年代にクーペ人気
ダイハツが試作したクーペは、スタイリングを重視しており、リタイアしたシニア世代が2人で楽しむことを想定しています。クーペが若者のあこがれだったのは1960~80年代あたり。日産のシルビア、トヨタのセリカ、マツダのルーチェロータリークーペ、ホンダのプレリュード、いすゞの117クーペなどが人気でした。後部座席はあっても狭いため、基本的に2人乗りで使われることが多く、若者のドライブデートを想定していたクルマです。その後、若者のクルマ離れもあり、クルマは大勢が乗れて荷物もたくさん積めるミニバンやワゴンが人気となりました。かつてクーペにあこがれた人たちは50~70代になっています。ダイハツはこうしたシニア層にもう一度働きかけてみようという狙いです。
(写真は、1963年に発売されたコンパーノ=ダイハツ工業提供)
スーパーカブは60周年
ホンダのオートバイ「スーパーカブ」は来年、生産開始から60周年を迎えます。スーパーカブは、耐久性と燃費の良さで世界160以上の国・地域に普及し、同じ車種での生産台数は4輪を含めても世界最多の1億台を誇っています。生産は2012年から中国に移管していましたが、近く発表される2018年モデルからは熊本工場でも生産される見込みです。スタイルもオリジナルに近づけています。これを機に販売にも力を入れるものとみられます。10月9日には、熊本工場に隣接するサーキットでスーパーカブの愛好家が集まって走るイベントが開かれました。
(写真は、1958年発売の初代スーパーカブ=本田技研工業提供)
サントリー角瓶は80周年
サントリーの角瓶は10月8日で発売から80年になりました。戦前に生まれ苦しい時期もありましたが、戦後は一貫して伸び続け、1983年にはピークを迎えました。その後、焼酎ブームが起き、アルコール度数が強くて値段も比較的高いウイスキーはあまり飲まれなくなっていきました。その長期低迷は2009年に底を打ち、再び飲まれるようになっています。ウイスキーを炭酸水で割るハイボールが「飲みやすくて値段も手ごろ」と若者にうけたためです。角瓶は日本で飲まれるウイスキーの3割近くを占めています。発売当初から瓶のデザインは大きく変わっていませんが、今も「角が好き」というファンがたくさんいます。
(グラフは、国内のウイスキー市場の変化と角瓶)
時代変わってもよくできた商品
かつて一世を風靡した商品が復活することはそう珍しいことではありません。かつて親しんだり憧れたりした世代が懐かしさから再び求めることもあるでしょう。ただ、それだけではなさそうです。かなり長い期間にわたって売れ続けた商品は、時代が変わってもよくできた商品と言えます。売り方や使い方、宣伝の仕方などを少し変えれば再び火が付くこともあるということだと思います。