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2017年10月04日

牛ふんで車が走る! 地産地消エネルギーの可能性

エネルギー

牛ふんから水素生み出す

 北海道鹿追町(しかおいちょう)では、牛ふんから作った水素で燃料電池車などを動かしています。牛が人間の6倍以上いる地域特性を生かし、地産地消エネルギーによる町づくりが始まっているのです。東日本大震災の後、地産地消エネルギーは、「地域の自立」や「安心・安全の循環型社会」を目指して、各地で導入が進んでいます。最近は、太陽光、風力、水力、バイオマス地熱などの一般的な再生可能エネルギー以外にも、地域にある様々なエネルギー源を生かそうという試みが見られます。輸入する化石燃料か原子力がなければ私たちの社会はやっていけないという思い込みは間違いで、エネルギーの世界はいろんな「目から鱗(うろこ)」がある意外性の世界です。地産地消エネルギーに関わる業界は、これからますますおもしろくなると思います。
(2017年10月3日朝日新聞デジタル)

夕張は地下に眠るメタンガスで

 北海道の夕張市は炭層メタンガスによる地産地消エネルギーの活用を目指しています。夕張市はかつて日本有数の炭鉱の町でしたが、日本のエネルギー政策の変更で炭鉱は閉山となり、10年ほど前、市の財政は破綻(はたん)しました。再建途上の夕張市が目をつけたのが、石炭層の中にあるメタンガスです。このガスは、炭鉱が掘削されていた時代には爆発事故を起こしてたくさんの人の命を奪いました。ただ今は、石炭よりもガスのほうが取り出せば使いやすいと考えられるようになり、取り出して電力や熱にして住宅や特産の夕張メロンのビニールハウスなどに供給しようというのです。試掘は終わり、近く本格開発が始まります。計画では、電気や熱にする過程で出る二酸化炭素(CO₂)は地中に戻し、その圧力でメタンガスを地上に押し出すサイクルも入れています。こうすることによって、地球温暖化の原因物質である空気中のCO₂を増やすことなく、メタンガスを簡単に取り出すことができるというのです。うまくいくと、これまでは電気代やガス代として市外に出ていたお金が市内で循環するようになるとともに、採掘、発電、熱供給などの仕事ができ、雇用も増えると考えられています。
(写真は、夕張の炭層メタン試掘現場。かつては悲しみを生み出したガスが、まち再生の役割を果たそうとしている=2016年9月16日撮影)

小水力もかなりの可能性

 水力で注目されているのは、小水力発電です。これまでは一般的に小水力発電とはいえ、水の落差が必要でしたが、ベアリング大手のNTN(本社・大阪)が開発した「マイクロ水車」は、ふつうの流れの農業用水路で発電できます。プロペラの形を変えることやベアリングをよりなめらかにすることなどによって、遅くて少ない水の流れでも発電できるようにしました。日本の農業用水路は総延長で40万キロメートルと言われます。ほかにも工業用水路、上下水道、小河川、排水路など水の流れているところは数え切れないほどあります。NTNによると、小水力発電の適地は日本に1万カ所以上あるとしています。ひとつひとつは小さくても数の多さを考えれば、かなりの可能性があるといえます。

夢想が現実になる世界

 私たちは、輸入する化石燃料や原子力がなければエネルギーを得られないと信じ込んでこなかったでしょうか。それは、巨大な電力会社やガス会社が巨大な発電所やガス工場から日本の津々浦々にエネルギーを送るというモデルが産んだ「常識」でした。しかし、もっと地産地消の考え方が広まり、蓄電などの技術も進めば、もっと様々なエネルギー源が活用されるようになると思います。私は朝夕、人並みに押されて駅の階段を降りながら、この位置エネルギーを電気に変えることはできないのか、なんて夢想しますが、そんな夢想が現実になることだってあり得るのがエネルギーの世界だと思います。

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