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2017年09月06日

ホンダが小型蓄電池 「低炭素社会」のカギ握る技術に注目!

エネルギー

再生エネルギーの欠点補う

 二酸化炭素を減らさなければ地球環境を守れません。そのためには、風力、太陽光などの再生可能エネルギーで電気を作る低炭素社会を実現しないといけません。再生可能エネルギーは政府の後押しもあって伸びてはいますが、火力や原子力に代わるほどの勢いはまだありません。最大の欠点は、自然まかせのため発電が不安定なことです。電気をためておければ、その欠点は解消します。つまり、蓄電が低炭素社会のカギを握る技術なのです。さまざまな業界が画期的な蓄電技術の開発に取り組んでいます。これから大きく伸びることが予想される技術であり商品でもあるので、就活生も注目しておきましょう。
2017年9月6日朝日新聞デジタル

(写真は、ホンダのハンディー蓄電機「LiB-AID(リベイド)E500」=同社提供)

蓄電社会を見越して開発か

 ホンダは以前から発電機を製造、販売しており、今回はその技術を使ってリチウムイオン電池を使った蓄電機を発売することにしました。家庭のコンセントやクルマのアクセサリーソケットから6時間で充電できます。スマホなら20回、ノートパソコンなら4回の充電ができます。年間の販売予定は3000台と、それほどインパクトの大きな商品ではありませんが、ホンダとしては蓄電社会の到来を見越して技術開発を進めることに意味があると考えているはずです。

(写真は、スマートフォンなどに使われるソニーのリチウムイオン電池=同社提供)

電力会社は不安定さを嫌う

 蓄電技術はこれからの社会になくてはならないものです。風力発電は風が強い時にはたくさんの電気を作りますが、風が吹かなければ発電できません。太陽光発電は、天気のいい昼間にはたくさんの電気を作りますが、太陽の出ていない日や夜間には発電量はほとんどありません。ですから、風力発電や太陽光発電は、出力調整が自由にできる火力の助けがあって、何とか安定して送電できているのです。大手電力会社が再生可能エネルギーを増やすことに消極的なのは、その不安定さを嫌っているためです。ただ、蓄電技術が進み、安いコストで大容量の電気を貯めることができるようになれば、たくさん発電するときは一部を貯めて、発電しないときに出力すればよく、今よりずっと安定するわけです。

 ほかにも、蓄電技術が果たす役割はあります。大災害で長く停電が続くときには、蓄電できていればある程度の電気を供給することができます。あるいは、家庭で蓄電できれば、電気代の安い夜間に電気を貯めておいて、電気代の高い昼間に使うといった電気使用量の平準化ができて、経済的になります。

(写真は、青森県六ケ所村の風力発電施設)

電気自動車が家庭用蓄電池に

 発電所や事業所で使う大規模で画期的な蓄電システムはまだはっきり姿が見えませんが、一般の家庭で蓄電のお世話になるのは意外に早いかもしれません。電気自動車(EV)の時代になると、多くの家で駐車場にあるコンセントからクルマの電池に充電することになります。この貯めた電気は自動車を動かすことだけに使うのではなく、災害時には家庭の電気としても使えますし、夜間の安い電気を昼間に使って電気代の節約をすることもできるようになります。電気自動車が家庭用蓄電池になるわけです。電気は貯めて使うものということが常識になるのは、すぐそこにきていると言えます。

 電気自動車については、「面接で聞かれる!就活生のための時事まとめ 100年に一度のクルマ革命①『電気自動車(EV)』」を読んでください。

(写真は、ホンダの電気自動車と外部給電機。取り出した電気でテレビや暖房機を動かせる=2016年2月8日、東京・日比谷公園)

幅広い業界で研究

 電池の技術は、日本は世界でもトップクラスと言われます。蓄電に関しては、電池メーカーだけでなく、電機メーカー、自動車メーカー、エネルギー業界など幅広い業界で研究されています。リチウムイオン電池のように物質の化学反応を利用する化学電池のほかにも、電気を空気の圧力や熱などに変えてエネルギーを貯めこみ、再び電気にして送るような方法も研究されています。画期的な蓄電技術を開発すると、その会社は大きく成長すると思われます。蓄電技術はこれから有望な分野だと覚えておきましょう。

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