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2017年08月23日

「あったらいいな」の小林製薬 成長の秘訣は?

化粧品・生活用品

「糸ようじ」30年記念しPR

 毎日、あるいは毎食後使っているという人も少なくない「糸ようじ」。1987年に小林製薬が発売してから今年で30年たつことを記念して、8月18日を「糸ようじの日」としてPRに力を入れることにしました。小林製薬は、「“あったらいいな”をカタチに」をキャッチフレーズに、ひたすら消費者のニーズを取り込むことを考えて成長してきた会社です。歯間ブラシも両手で糸の両端を持って使うタイプが細々と使われていた時代に、「あったらいいな」と片手で使えるタイプを売り出し、「糸ようじ」をヒット商品にしました。お客さんのニーズを商品開発に生かすやり方をマーケット・インといいますが、中途半端になることが多いものです。小林製薬は徹底していて、学ぶべきところが多いように思います。
(2017年8月17日朝日新聞デジタル)

(写真は、小林製薬が1987年に発売した初代の糸ようじ=小林製薬提供)

すき間市場ねらい

 小林製薬は、まもなく創立100年になる古い会社です。創立時の営業方針として、薄利主義・多売主義・迅速主義の三つをうたっています。それが今の小林製薬の行動規範である「並外れた顧客志向」につながっています。社名に製薬とついていますが、薬品はごく一部で、健康食品、口のケア商品、肌のケア商品、台所やトイレの掃除用品、芳香剤、日用雑貨品などを幅広く開発、販売しています。商品開発は「あったらいいな」が基本です。まず社員が「あったらいいな」と思う商品を提案します。年間1万5000件もの提案が出されるそうです。それを各部署がカテゴリーごとにまとめてふるいにかけ、社長を含む経営トップによるアイデア会議で開発するかどうか最終的に判断します。開発するとなれば、「迅速」が求められ平均13カ月で店頭に並ぶそうです。商品分野はニッチ(すき間)市場をねらいます。「小さな池で大きな魚を釣る方が簡単」という考え方です。
(写真は、「熱さまシート」商品キャラクターの「熱さまくん」と小林製薬の社員たち=2016年2月1日撮影)

わかりやすさが基本

 商品名は「わかりやすく」が基本です。「のどぬーる」「熱さまシート」「ブルーレットおくだけ」「トイレその後に」「消臭元」「タフデント」など、商品名を見たり聞いたりしただけでどんな用途の商品かが分かります。テレビCMをたくさんうつのも特徴ですが、その内容もまずは悩みをはっきり示し、それが解決する様をわかりやすく見せるというものです。商品開発から販売まで「お客さんだけを見て、小さな市場の商品を開発し、わかりやすく説明する」ということが徹底されています。
(写真は、小林製薬のロングセラー商品「ブルーレットおくだけ」シリーズの液体タイプ=小林製薬提供)

ひと昔前の大塚製薬と似ている

 やっていることの一つひとつは驚くことではないかもしれませんが、ここまで徹底していることが強さの秘訣でしょう。そういえば、今はだいぶ普通の大企業っぽくなりましたが、ひと昔前の大塚製薬もこんな感じでした。製薬会社なのに、「オロナミンC」というドリンクや「ボンカレー」というレトルトカレーを売り出して大ヒットさせました。そのあとも、「カロリーメイト」「ポカリスエット」「エネルゲン」などユニークな飲料や食品を次々に発売しました。大塚製薬も、今はないけどあったらいいな、と思う商品をニッチな市場向けに開発していたところがよく似ています。
(写真は、大塚製薬のヒット商品「ポカリスエット」の500mlボトル=大塚製薬提供)

やりがいはあるか?

 製薬会社と言えば、研究開発に膨大な資金を使って、画期的な新薬で一発当てれば万々歳というイメージですが、小林製薬やかつての大塚製薬のような会社もあります。一概にどういう会社がいい会社とは言えませんが、ユニークな商品を次々に世に送り出す会社は、社員ひとりひとりのアイデアが生かされやすい会社であるとは言えるでしょう。そうした会社はほかの業界にもあるはずで、探してみてください。やりがいはあると思いますよ。

 そうそう、8月18日を「糸ようじの日」にしたのは、歯(8)と歯(8)の間に糸(1)が通っていることが由来で、日本記念日協会の認定も受けました。

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