3社で新会社設立
日本郵船、商船三井、川崎汽船は、コンテナ船事業を切り離して統合した新会社を設立しました。日本の外航海運会社は、長年規模拡大による生き残りを図ってこの3社に集約されてきました。しかし、それでも最近の船余りで業績は悪化しており、各社は採算の悪いコンテナ船事業を集約することにしました。海に囲まれた日本にとって海運業界はなくてはならない業界ですが、運賃が需給によって決まるため、浮き沈みが激しいのが特徴です。世界的にまだまだ再編が進みそうです。
(2017年7月11日朝日新聞デジタル)
(写真は、統合に合わせて東京で記者会見した3社の社長たち。左から川崎汽船の村上英三社長、商船三井の池田潤一郎社長、オーシャンネットワークエクスプレスのジェレミー・ニクソンCEO、日本郵船の内藤忠顕社長)
コンテナ船事業で世界6位
新会社は7月7日付で設立されました。社名は「オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)」で、来年4月に事業を始める予定です。その場合、コンテナ船事業で世界6位、シェア約7%になるとみられます。
運賃はリーマン前を大幅に下回る
外航海運業界は、ここ数年、船余りで苦境に陥っています。2008年にあった世界的経済危機リーマン・ショックの前の好況だった時に海運会社が大量に注文した船が10年代に入って次々に完成しました。一方で、荷動きは中国経済や南米経済の低迷などもあってリーマン・ショック前を大きく下回ったままそれほど回復していません。船の供給は大きく増えたのに、荷動きは減ったため、コンテナ船やばら積み船の運賃はリーマン・ショック前の運賃を大幅に下回っています。
巨額の赤字を計上
このため、外航海運会社は最近、巨額の赤字を出しています。2017年3月期決算では、日本郵船が2657億円の、川崎汽船が1394億円の最終赤字を計上しました。商船三井は52億円の最終黒字ですが、売り上げは12.1%も減らしています。ただ、2014年3月期は3社とも黒字を計上しているように、船余りの中でも円安が進んだり、燃料の重油が値下がりしたりするなどのプラス要因があれば、浮上する力は秘めています。
(写真は、三井商船のコンテナ船=同社提供)
歴史のある業界
日本の海運業界はとても歴史のある業界です。日本郵船は、三菱グループ創始者の岩崎弥太郎が作った海運会社がもとになっており、さらにさかのぼれば、坂本龍馬の海援隊の流れをくんでいます。造船と並んで三菱グループの祖業といえる存在です。商船三井も創立から130年を超える歴史を誇っています。海外と結ぶため、世界中に拠点があり、とても国際性がある業界です。
(写真は、三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎氏。幕末の激動の中を駆け抜け、武士から実業家に転身しました)
さらなる再編はあるか?
ただ、世界的な競争にさらされる業界でもあります。積み荷を託す顧客にしてみれば、会社の国籍はそれほど関係ありません。運賃は市場で決まりますので、差はつきません。そうなると、たくさんの船を持っていて融通がきくことが大事になってきます。加えて規模が大きくなればなるほど、港湾施設なども効率的に使うことができるようになって、コスト削減につながります。ということで、世界的な合従連衡が続いています。最近でも、昨年末には世界最大手のAPモラー・マースク(デンマーク)がドイツ大手の買収を発表、今月には中国大手による香港大手の買収も明らかになりました。日本の「3社プラスONE」が日本の外航海運業界の最終的な姿かどうかはわかりません。さらなる再編があってもおかしくない世界情勢です。