業界研究ニュース 略歴

2017年07月07日

船井・ドンキvs.家電大手 「4Kテレビ」商戦で火花

家電・総合電機

数年後にはEVにシフト

 中堅家電の船井電機やディスカウントストアのドン・キホーテが、自社ブランドの格安4Kテレビで、大手家電メーカーがひしめく国内テレビ市場に挑戦し、出足がいいようです。大手が高級路線に舵を切ったため、普及価格品が品薄になり、そこに商機を見出しています。
(2017年7月4日朝日新聞デジタル)
(写真は、大阪市内のヤマダ電機に並ぶ船井電機の液晶テレビです)

「価格の割には性能がいい」

 船井電機製の液晶テレビ11機種(うち4Kは8機種)を6月から独占的に売り出しているのは、家電量販店最大手のヤマダ電機です。機能面では大手と大差はなく、価格(6月末時点)は、32型の普及機で税別3万9800円と、国内大手の同型より1万円近く安いとのこと。ドン・キホーテは、日本メーカーに委託した自主企画商品の50型4K液晶テレビで税別5万4800円。東芝子会社の電子回路基板を使っていて「価格の割に性能がいい」と評判だといいます。
(ヤマダ電機に並ぶ船井電機のテレビ。すぐにレジに持って行けるようになっています)

大手が一斉に有機EL高級路線、そこに商機が

 一方、事業採算が悪化した大手は最近、高級路線を追求し、安価な普及機の機種を絞っています。ソニー、パナソニック、東芝は今年の夏の商戦から高品質高価格の有機ELテレビを前面に打ち出しました。こちらの「業界研究ニュース」でも、大手メーカーの有機ELテレビについて取り上げてきました(有機ELで「壁掛けテレビ」の時代へ=5月9日
東芝子会社が有機ELテレビに参入 吉と出るか?=1月13日)。
 ところが、かえって普及価格品が不足気味だといいます。そのすき間に船井は「需要がある」とみています。ハイスペックだけが消費者の心をくすぐるわけではないというわけです。前回の薄型テレビでの参入は大手メーカーの壁に阻まれましたが、冒頭の記事によると、船井は2017年の販売台数でシェア5%を、さらに2018年には2桁台にもっていくことを目指しています。そうなれば、船井は国内4位のソニーの13.3%(英国調査会社ユーロモニター調べ)と肩を並べるくらいになります。
(写真は、パナソニックの有機ELテレビ。本物のフラワーボックスと並べても見分けが付かないほどの高画質が特徴)

テレビ市場から一度は撤退していた船井電機

 おりしも、船井電機創業者の船井哲良さんが7月4日、亡くなりました。享年90。その追悼記事によると、船井電機はOEM(相手先ブランドによる生産)で業績を伸ばし、人件費の安い中国など海外で生産した製品を、北米の量販店を中心に販売する手法で業績を拡大しました。2006年には国内の量販店を販路にして「FUNAI」ブランドの薄型テレビ販売に乗り出したものの失敗しています。今回の液晶テレビ参入は、リベンジというわけです。一度は撤退した国内のテレビ市場ですが、今回は手ごたえを感じているようです。よいものをつくれば必ず売れるほど単純ではありません。メーカーはたえず他のメーカーの動向、消費者の動向をウォッチし、ものづくりをしているのです。
(写真は、船井電機の創業者・船井哲良さん)

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