ヤマトとDeNAがタッグ
ネット通販の普及により、宅配便の需要が年々爆発的に増えています。しかし、運転する人が足りず、今のサービスの持続可能性に疑問が出ています。そこで、問題解決の切り札とみられているのが「無人配達」です。宅配便最大手のヤマト運輸とIT大手のDeNAは17日、自動運転による将来の無人配達を見据えたサービス「ロボネコヤマト」の実証実験を始めました。無人の自動車が指定の場所にやってきて、荷物を受け取ることができます。これがそう遠くない未来の配送の姿になるのでしょうか。
(2017年4月18日朝日新聞デジタル)
(写真は、ロボネコヤマトの車内の様子。備え付けボックスから利用者が荷物を取り出す仕組みです)
「荷物と待ち合わせる感覚」
実験は、神奈川県藤沢市の一部で17日に始まりました。利用者はスマートフォンやパソコンから配達を希望する時間と場所を入力。車が来たら、あらかじめ決めた暗証番号などでボックスを開いて荷物を取り出します。時間は10分単位で指定できます。自宅に来てもらうことのほか、職場など出先近くの路上を指定することもできるため、「荷物と待ち合わせるような感覚」で受け取ることができます。
業界は大きなコストダウンに
宅配で最も人手がかかるのが、「ラストワンマイル」の配送と言われます。集配所から出て、確実に配送先の相手に届けるまでの最終行程のことです。受け取る人がいなくて再配達になったり、マンションなどでは何度も上ったり下りたりします。この最終行程が無人でできるようになれば、宅配業界にとっては人手不足に悩まされることなく、大きなコストダウンになります。
法と倫理が課題に
問題は、実用化の時期です。自動運転の技術レベルは4段階に分けられていて、今最も進んでいる実用車はレベル2です。これはアクセル、ブレーキ、ハンドルの3つの操作のうち2つが自動化されているレベルです。日産自動車のセレナなどがこのレベルで、すでに公道を走っています。レベル4が完全自動運転となり、無人運転が可能になります。今、レベル4に向けて自動車メーカーやIT企業が開発にしのぎを削っています。経済産業省はかつてレベル4を2030年代としていましたが、今は目標を2020年にまで前倒ししています。
ただ、技術的には可能でも、法的、倫理的課題の解決にはまだ時間がかかりそうです。事故が起こった場合の責任はメーカーにあるのか、所有者にあるのか、乗車していた人にあるのか。あるいは、事故を起こす切迫した状況での優先順位をどうするか、という課題もあります。つまり、正面衝突を避けると歩行者をはねてしまうという状況の時にハンドル操作をどう設定するか。こうした問題をクリアするための議論はまだ始まっていません。また、自動車の輸出入を考えると、こうした問題を国家間で調整しないといけませんが、こちらもまだです。ということで、無人配達車が公道を走り回る時期を2020年と考えるのは早すぎるでしょうが、2020年代には実現すると思います。
(図表は、2015年11月24日朝日新聞朝刊に掲載された自動運転のレベルです)
ドローンでベランダにお届け
ラストワンマイルの配達については、このほかドローンも有力です。楽天はドローンを使った配送サービス「そら楽」をすでに始めています。専用のスマホアプリで商品を注文し、受け取り場所も指定します。受け取り場所には、直径5㍍の円を描いたビニールシートが敷いてあり、ここに賞品を置いて飛び去るというものです。ただ、まだ事故の危険もあるため、山間部やゴルフ場など人のあまりいないエリアだけのサービスです。しかし、将来は、高層マンションなどでベランダに直接荷物を届けることを視野に入れています。
ネット社会の進展に伴って出てきた配送問題は、社会の姿を劇的に変える可能性を秘めています。変化は配送に関係するすべての業界に及ぶと思われますので、就活生は注意しましょう。
(写真は、楽天で使われているドローン。ゴルフ場向け宅配サービスで使われています)