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2017年04月21日

線虫でがんを見つける画期的検査法実用化へ

医薬品・医療機器・医療機関

日立と九州大発のベンチャーが共同研究

 日立製作所と九州大学発のベンチャー企業HIROTSUバイオサイエンス社(ヒロツバイオ)が共同で、がんのにおいを好む線虫の性質を利用して、がんを発見する検査法「N-NOSE」の実用化に乗り出しました。2020年までの実現を目指すそうです。

(2017年4月19日朝日新聞デジタル)
(写真は、日立本社であった共同研究を発表する会見の様子です)

きっかけは、早期がんに食らいついたアニサキス

 以前から、犬ががん患者を嗅ぎ分けるという研究がありました。まだ特定されていませんが、がんは何らかの特有のにおいを発するらしいのです。「N-NOSE」は、体長1ミリほどの線虫が、がん患者の尿には寄りつき、健康な人の尿だと離れる性質をセンサーとして利用しています。

 2015年に九州大学のチームが米科学雑誌で発表した研究によると、早期がんを含め95%の精度でがんの有無を判定できたそうです。研究のきっかけになったのは、伊万里共立病院(佐賀県)の園田英人外科部長が、人の胃壁に食い込んだ線虫の一種アニサキスを摘出した際、アニサキスががん細胞に食らいついていて、早期胃がんを発見したことでした。

(写真は、検査の様子。がん患者の尿を左側に入れると、中央にいた線虫が左側に寄っていきます=日立製作所提供)

九大研究者ががん検査のベンチャー企業社長に

 アニサキスは魚の寄生虫で、生魚から人の消化器に入り込むと激しい嘔吐と痛みなどの症状を起こし、ショックで死に至ることもあります。手術で摘出しますが、園田さんが他の手術報告も調べていくと、がん細胞に食らいついたアニサキスの報告例が多数あったのです。

 園田さんと共同研究したのが、九州大学味覚・嗅覚センサ研究開発センターの広津祟亮助教です。広津さんも、線虫の嗅覚が専門でした。九州大は、線虫によるがん検査法の国際特許を出願しました。ヒロツバイオの代表取締役が、この広津さん。会社概要によると、同社は2016年の設立で、資本金5885万円、事業内容は「生物診断研究:線虫および線虫臭覚センサーを利用したがん診断検査装置の研究・開発・製造・販売」とあります。

大企業が目をつけた大学発ベンチャー

 ヒロツバイオのサイトで、広津社長は「N-NOSE」のような生物診断について、「人工機器を凌駕(りょうが)する驚異的な能力を生かすことで」高感度の検査成果が得られ、「飼育コストのかからない生物を利用することで」低コストを維持できると、うたっています。

 日立は、この検査法の自動解析技術開発を受け持ちました。両者の狙い通りなら、1滴の尿と50~100匹の線虫があれば、数千円の費用で、早期がんや多種類のがんの検査ができるようになるというのです。日立のような資金力と営業力のある大企業が、研究室に閉じこもらず広く社会に研究成果を還元しようと立ち上げた大学発のベンチャー企業の優良株を、それこそ目を皿にして探しているといってよいでしょう。大学発ベンチャーに企業研究の目を向けてみるのもよいですね。

(写真は、実用化をめざす新しいがん検査の自動装置です)

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