百貨店売上高、36年ぶり6兆円割れ/地方店の閉店加速
百貨店の売上高が減っています。2016年は前年比2.9%減の5兆9780億円となり、36年ぶりに6兆円を下回りました。個人消費が低迷していることに加えて、中国人観光客などの「爆買い」が一服したことが足を引っ張りました。
百貨店売上高は、1991年をピークに長く減少傾向が続いていましたが、最近は「爆買い」という特殊事情で一時的な伸びを見せていました。しかし、「爆買い」がしぼむと、再び元の減少基調に戻りました。基調に変化はなかったということでしょう。そうなると、今後、再編や店舗の削減、売り場の縮小という改革が必要になってきそうです。百貨店業界は再び厳しい時代を迎えようとしています。
(写真は、大阪市内の百貨店の免税カウンターです)
(2017年1月20日朝日新聞デジタル)
百貨店・スーパーは減、コンビニは増
百貨店の売上高が最も多かったのは、バブル末期の1991年です。金額は9兆7130億円でしたから、2016年はピークの約6割まで落ち込んだことになります。6兆円より少なかったのは、1980年以来となります。
百貨店は、スーパーやコンビニに比べ、値段の高い商品を売っています。バブル崩壊後、日本人は生活防衛のため、高額商品の消費を抑えてきました。百貨店の売り上げは落ちる一方、スーパーの売り上げは伸びましたが、そのスーパーも21世紀に入って不調になってきました。
一方、一貫して伸びているのはコンビニです。この傾向は2016年も変わらず、総合スーパーの売上高は前年比1%減の13兆426億円、コンビニ(9社)の売上高は前年比3.6%増の10兆5722億円となりました。
円高基調などで「爆買い」鈍る
最近百貨店が息を吹き返していたのは、中国人観光客を中心とする高額品の「爆買い」が原因です。ただ、2016年に入ると、円高基調になったことや中国の景気の伸びが鈍ったこと、ネット通販で購入する人が増えたことなどから、勢いが鈍りました。
再編と整理を進める
百貨店は、21世紀に入ってから規模の拡大を目指して、再編を進めてきました。動きをまとめてみると、
◆三越+伊勢丹=三越伊勢丹ホールディングス(合併)
◆大丸+松坂屋=Jフロントリテイリング(合併)
◆そごう+西武百貨店=ミレニアムリテイリング(経営統合)
◆阪急百貨店+阪神百貨店=H2Oリテイリング(経営統合)
合併や統合をしていないのは、大手では高島屋だけ。その高島屋も、H2Oと資本業務提携を結んでいます。
一方で、各社は不採算店の整理も進めてきました。最近では昨秋、三越伊勢丹が伊勢丹松戸店、伊勢丹府中店、広島三越、松山三越の4店の縮小検討を表明しました。また、そごう・西武は昨夏、西武の八尾店と筑波店の閉鎖を決めています。
(写真は、2月末で閉店する茨城県の西武筑波店。1985年に開店したつくば市中心街の中核施設でしたが、周辺に新しいショッピングセンターがしたこともあり、近年は苦戦していました)
じり貧から抜け出せるか
もちろん、店舗の改装や、人気の低価格チェーン店の誘致など、前向きな動きも活発になっています。ただ、百貨店という業態自体が時代遅れになっているという声もあります。
生き残るためには、前向きな動きをしながらも、さらなる再編や縮小に踏み込まざるを得ないという見方が有力です。ブランド力もまだまだあり、社員の待遇も小売業界の中では相対的にいいといわれる百貨店業界ですが、じり貧から抜け出すのは簡単なことではないと思われます。