シビック、国内市場に再投入へ 往年の名車、まずセダン
ホンダが、かつての人気車「シビック」の国内販売を復活させます。シビックは2011年に国内での通常販売を終えていました。近頃、日本の自動車メーカーは、いったん発売を終えた名前のクルマを復活させる動きを見せています。新しい車名を浸透させるのは大変だということに加え、若者が車を買わなくなり、主なお客さんである中高年に「懐かしさ」を訴えようという戦略です。人口が多く、かつ可処分所得の多い中高年が市場の主役になっている時代を示しています。
(2016年10月1日朝日新聞デジタル)
(写真はシビックセダン)
ホンダを代表するクルマだった
シビックは、1972年に初代が発売されました。ずんぐりしたスタイルがかえって斬新で、当時厳しくなっていた環境基準をクリアするCVCCエンジンも先進的でした。ホンダを代表するクルマとして誰でも知っている車名でしたが、2011年に国内販売を終えていました。ただ、ホンダの販売は低迷気味となり、ブランド力を再構築しようという議論の中から、シビックの再投入が決まったようです。
「NSX」や「86」も
ホンダは今年、バブル時代にオールアルミの車体で話題を呼んだ高級スポーツカー「NSX」も復活させました。
ホンダ以外にも、この数年、昔の名前が続々再登場しています。トヨタはスポーツカーの分野で1980年代に若者に人気のあったエンジン86からとった車名のクルマ「86」を復活。三菱自動車も2002年まで主力車だった「ミラージュ」を復活させました。日産は、バブル時代に「シーマ現象」という言葉を生み出したほど売れた高級車「シーマ」をハイブリッド車として復活させています。
自動車だけでなく、スクーターの復活もあります。ホンダは、1980年代に爆発的に売れた「タクト」を16年ぶりに復活させて売り出しています。
(写真は、ハイブリッド車の日産「シーマ」)
昔の名前がいい別の理由も
こうして復活するクルマは、どれも一世を風靡(ふうび)したクルマです。中高年にとっては、若い頃あこがれのまなざしで見ていたり、楽しかった思い出が詰まっていたりします。中高年に刺激を与えようという狙いは明らかです。
ほかにも、クルマに新しい名前をつけようと思っても、いい名前がつけにくくなっている現実もあります。かつては、「セドリック」「ブルーバード」「クラウン」など、誰でもわかる名前をつけることができました。
でも今は、それらしい単語はほとんど商標登録済みで、造語するにも、かっこいい響きの名前は登録されていることが多くなっています。「ならば、昔の名前で」と考えるようになっているのではないかと思います。
クルマへの思い入れある中高年
今後、復活の要望の強いクルマを、私の好みも入れて推測すると、トヨタなら「セリカ」、日産なら「シルビア」、マツダなら「RX-7」と「ファミリア」、いすゞなら「117クーペ」といったところでしょうか。
無人運転のクルマが登場したり、カーシェアリングが普及したりする時代ですが、クルマへの思い入れを持ち続けている中高年は少なくないということも知っておきましょう。