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2016年08月19日

人材を確保せよ!イオンが勤務地限定社員も部長に

流通

イオン、転勤ない「地域社員」も店長に(2016年8月10日朝日新聞デジタル)

 イオンは2017年2月にスーパー事業の人事制度を改め、転勤のない「地域社員」が店長や部長に昇進できるようにする。転勤を伴う社員との間に生じていた給与格差も基本的になくす。地域に精通した有能な人材をつなぎとめ、販売力を強化するのがねらいだ。イオンは前身のジャスコ時代から、働く地域を特定して転勤しない正社員「地域社員」の採用枠を設けていた。地域社員には転勤がない代わりに給与を抑え、昇進も課長までにとどめる制限をつけていた。
(写真は今年のイオンの入社式)

非正規雇用4割超時代の「限定型正社員」

 2年に1度実施される厚生労働省の2014年の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」で、パートや派遣などの非正社員が労働者にしめる割合が初めて4割に達しました「非正社員 初の4割/人件費抑制背景に」(2015年11月5日朝日新聞朝刊)。正規と非正規雇用の格差が大きな問題になり、政府もその解消のために「多様な形の正社員雇用」を政策課題に掲げています。転勤を伴わない地域限定型や職種限定型、労働時間限定型などです。厚労省の2012年の調査では、調査対象1987社中1031社(51.9%)がこうした多様な正社員制度を導入していました(厚労省「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」)。このうち勤務地限定型は382社(19.2%)でした。 

地域限定型でも差を設けない?

 仕事はしたいが、子育てや老親(ろうしん)の介護など転勤を望まない人たちは少なくありません。グローバル企業や全国展開の企業で、「社命とあらば、いずこへも」という転勤OKの正社員と、転勤をしない正社員が併存する企業が増えています。ただし、転勤をしない分、一般に給与や昇進など待遇に差をつけられていました。それに対してイオンの「地域社員」は、幹部登用や賃金格差の解消を掲げているところに先進性を感じます。

地域限定に積極的に価値を見いだす

 限定型正社員は働く者のワーク・ライフ・バランスへの配慮という側面もありますが、企業側とすれば労働力の確保という雇用戦略があります。2年前、ユニクロが全国の店舗で働くパートやアルバイト計約3万人のうち1万6000人を地域限定社員に登用するという方針を打ち出し、大きなニュースになりましたが、やはり人材確保のねらいがありました。イオンも人材確保が目的ですが、冒頭の記事は、背景をこう分析しています。「スーパー事業では、地域密着型で高いノウハウを持った社員を育てることが重要になる。そのため、地域社員の制限を撤廃して賃金体系も見直すことにした」。つまり、転勤しないことを単にマイナスの評価とせず、むしろ地域に根ざしてがんばる働き方は地域密着型の業態に不可欠なので、これを積極的に推進していこうというのです。実際に地域社員制度がどうように成果を挙げるかは、これからですが、企業の雇用制度にはどんな事情や背景があるのか、新聞記事などでチェックしておくことも大切です。

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