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2016年07月29日

新商品はカレーパンにコーラ、「無添くら寿司」の狙いは何だ!

食品・飲料

カレーパン・メロン半玉…回転ずし、サイドメニューに力(2016年7月27日朝日新聞デジタル)

 回転ずし大手各社が、すしとは食い合わせが悪いような風変わりなサイドメニューに力を入れている。「無添くら寿司」を展開する「くらコーポレーション」の新商品は「シャリカレーパン」に「シャリコーラ」。あえてすし以外の多様なメニューを充実させ、幅広い客層を呼び込もうとしている。
(写真はくらコーポレーションが「無添くら寿司」で発売する新商品の「シャリカレーパン」(右)と「シャリコーラ」)

メロンソーダにフライドポテト、ラーメン…一体これは?

 シャリカレーパンは、半分に切ったパンの表面だけを揚げ、中にカレーと酢飯を混ぜた具を挟んでいます。1個162円(税込み)。1年前から出している酢飯を使ったカレー「すしやのシャリカレ-」の派生メニューなのだそうです。「シャリコーラ」は、米麴(こめこうじ)からできる甘酒や米酢でつくった炭酸飲料で194円(同)。スシローは7月から季節限定で、メロン半玉を使ってアイスやかき氷をトッピングした「まるごと食べるメロンソーダ」を販売。かっぱ寿司は、2014年から「チョコとホイップで食べるフライドポテト」を出しています。はま寿司は数カ月に1回ラーメンメニュー「贅沢(ぜいたく)の一杯」を更新していて、現在は、さまざまな鰹節(かつおぶし)をブレンドした魚介風味の「荒ぶし醬油ラーメン」を提供しています。

飽食ぎみの回転ずし、「ただ回るだけ」ではダメ?

 回転寿司は1958(昭和33)年、東大阪市に「廻る元禄寿司」が開店したのが発祥です。元禄寿司は現在、東大阪本店を中心に直営10店舗がありますが、HPを見る限りお品書きは寿司一遍倒のようです。一方、日本フードサービス協会の調査によると回転ずしを含むすし店は1万1568店もありいささか飽和気味で、「ただ回るだけ」ではもはや集客できないところに来ていますタッチパネルで自分の欲しいメニューだけが届くシステム(無添くら寿司やスシロー)の導入も、飽和する市場を生き抜く工夫のひとつです。

“異種格闘技”メニューの真意

 では、ぞくぞく登場する“異種格闘技”メニューのねらいはなんでしょう。以前は回転ずしで出てくるスイーツといえば、寿司を食べたあとのデザートとか、お子様向けと見られていました。ところが冒頭の記事でくらコーポレーションの田中邦彦社長はデザートメニューのターゲットについて「5人くらいのグループ客だと、必ず一人くらい生ものがだめ、という人がいる」とコメントしています。釣り堀で魚(お客さん)を効率よく釣るには、同じエサ(メニュー)でなく、さまざまなエサを垂らす。そうすれば、いろんな魚が釣れるというわけです。

「顧客の心を読む」がBtoCビジネスの“キモ”

 田中社長のコメントには、「つねにお客さまの心理を読む」という経営者の姿勢が現れています。古典的な経済学では、ひとは「合理的な判断をするもの」として理論を組み立ててきました。しかし、実際の人間は、気まぐれで必ずしも合理的ではありません。そんな生身の人間の心理を読むことが顧客と直に向き合うBtoC(消費者向け)ビジネスの“キモ”です。採用選考で、「他人の気持ちがわかる」コミュニケーション力が高く評価されるのには、そういう側面もあるのです。

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