配車システムを京都の過疎地で(2016年5月27日朝日新聞朝刊)
過疎地の足として一般人同士が有料で相乗り(ライドシェア)する「ささえあい交通」が京都府京丹後市丹後町で始まった。スマートフォンなどのアプリで車を呼ぶために使われるシステムは、ライドシェア世界大手の米ウーバー・テクノロジーズの日本法人が提供。市民18人の自家用車を用いる。運賃は初乗り1.5キロまで480円。路線バスより高くタクシーより安い。ウーバー社日本法人の社長は「高齢者や観光客の課題は他地域にもある」として事業拡大に意欲を示した。
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この記事は経済面の掲載ですが、同日付の丹後版(京都・丹後地方の読者向けの地域紙面)にはもう少しくわしい記事が載っています。それによると、利用者がスマホやタブレット端末のアプリを使って、自分のいる場所と行きたい場所を入力して配車を依頼すると、登録している市民ドライバーが迎えに来ます。ドライバーは55歳~68歳で、稼働するのは午前8時から午後8時まで。事前に登録されたクレジットカードで決済するので車内での現金のやり取りもないそうです。予約制の市営オンデマンドバスを受託しているNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」が運行を担当します。
自宅の空室や自動車、家庭用品などを貸し出すビジネスはシェアリング・エコノミー(共有型経済)といわれ、欧米を中心に広がってきました。日本でも話題になった海外からの旅行者を自宅に泊める「民泊」もこの一種ですね。シェアリング・エコノミーは草の根で世界的に拡大しつつありますが、日本では通称「白タク」といって、ドライバーが対価をもらって自家用車で人を運ぶ行為は道路運送法で禁止されています。ウーバー社は昨年、福岡でライドシェア事業をはじめたところ国交省から「白タク」と判断され、中止した経緯があります。
しかし、過疎地では鉄道が廃止され、路線バスも本数を制限され、独居の高齢者はマイカーに乗れません。公共交通は採算が合わず、たいていは赤字です。そこに登場したのがライドシェア。過疎地の「足」として、“救世主”になるかもしれません。都市部では既存のタクシー会社との軋轢(あつれき)も大きくなるでしょうが、もともとビジネスが成り立たなかった地域なら、その心配もありません。政府も地域を限定し利用法を工夫するなどして法制化する方針のようです。新しいビジネスモデルは、法規制や既得権などの壁が立ちはだかることがあります。ですが、まっとうなニーズがあるかぎり、道はひらけるでしょう。ウーバー社にはトヨタも注目し、資本・業務提携を発表しています(「車大手IT配車と連携/トヨタ、ウーバーに出資・車リース」(5月26日朝日新聞朝刊)。海外でウーバーの運転手にトヨタ車をリースで貸し、運転手が収入からリース料を払う仕組みを作ったり車載アプリを共同開発したりするそうです。就活の業界研究では、こうした新しいビジネスにも注目してみてはいかがでしょう。