iPhoneロック解除、日本企業子会社が協力か(2016年3月24日朝日新聞夕刊)
2015年12月に米カリフォルニア州で起きたテロの容疑者が使っていたiPhoneの中の情報を得る方法を米国連邦捜査局(FBI)に示したのは、サン電子(本社・愛知県江南市)の子会社で、イスラエルにあるセレブライト社だった。ロイター通信などが報じた。
2015年12月に米カリフォルニア州で起きたテロの容疑者が使っていたiPhoneの中の情報を得る方法を米国連邦捜査局(FBI)に示したのは、サン電子(本社・愛知県江南市)の子会社で、イスラエルにあるセレブライト社だった。ロイター通信などが報じた。
問題となったテロ事件で容疑者のiPhoneはロックがかかっていて中身が見られないため、FBIはロック解除のための新たなソフトを作って見られるようにすることをアップルに求めていました。これに裁判所も同意し、命令を出しました。しかし、利用者のプライバシーを重視するアップルは「捜査当局は他の事件でも次々と求めかねないし、犯罪にも悪用されかねず、外国政府も同じような要求をし始めるのも時間の問題」として、命令の取り消しを求めていました。グーグルやフェースブック、ツイッターなど米国IT大手のCEOらも次々アップル支持を表明し、大問題となりました。
ところが、ロック解除せずとも中身が見られる技術は、すでに開発され製品化していたのですね。セレブライトの商品紹介サイトhttp://www.sun-denshi.co.jp/global/ufedを開いてみると、トップにこんな記述があります。
「各国の警察、軍、法執行機関、諜報機関等で携帯電話、スマートフォン、PDA等のデータ抽出の際に使用されているリーディングプロダクト」
「携帯電話は犯罪捜査において重要な証拠品として扱われております。近年増加する、振り込め詐欺、違法薬物取引、盗撮、外国人犯罪などの対処、証拠の抽出に非常に有効です」
セレブライト社は1999年設立で、2007年にサン電子傘下に。「世界100か国で3万以上の製品が“活躍”している」そうです。もっとも、米国カリフォルニア州のテロに関する操作協力については微妙な問題もあるようで、同社はコメントを控えています。
じつはIT企業の海外投資先として、イスラエルは有望視されています。「イスラエルで新興IT祭典/日本企業、最先端技術狙い団体参加」(2015年9月7日朝日新聞朝刊)という記事では、イスラエル最大規模のスタートアップ(新興企業)の祭典「DLD」がテルアビブで開催されたことを伝えています。日本から約20社からなる使節団と横浜市が団体としては初参加し、「近年は『第2のシリコンバレー』とも呼ばれ注目が集まるイスラエルの先端技術を取り込みたい思惑がある」と書かれてています。参加企業のひとつ、ソニーのパートナー戦略部統括部長は「競合が激しい米シリコンバレーに比べ、イスラエルには早期から投資可能なアイデアが数多くある」とのコメントをしています。
そこに早くから目をつけていたのがサン電子でした。1971創業で、技術者8人からのスタートだったといいます。パチンコホール用のコンピュータシステムを開発し販売、さら世界的な汎用コンピュータの心臓部に使われる集積回路の標準セットを開発したことで海外でも認められました。1980年代からはロサンゼルスやオランダ、台湾など海外進出にも積極的です。サン電子のHPで山口正則社長は「情報通信分野を牽引するセレブライト社の成長とさらなる強化」を目標に掲げています。技術革新に対する目利きと情報収集能力、「ここぞ」というときの積極投資。元気のよい企業の典型を見る気がします。就活生のみなさんの企業研究も、かくあるべしですね。
2024/10/14 更新
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