電子マネー決済、5兆円へ(2016年3月29日朝日新聞朝刊)
カードをサッとかざすだけでお金の支払いができる電子マネー。その決済額は今年、5兆円を超える勢いで伸びている。地方で利用者を伸ばす流通系は都市部の攻略をめざし、首都圏での利用が中心の交通系もシェア拡大に向けて動き出した。
小売り大手のイオンは今月、WAON(ワオン)での決済が初めて年間2兆円を超えたと発表した。電子マネーに参入して丸9年。店頭での勧誘に加え、電子マネーに交換できるポイント特典も使って利用者を増やし、店頭での決済の3割をワオンが占めるまでに育った。
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ひとむかし前までは「edy」(現・楽天edy)か「suica」(JR東日本)くらいしかなかった電子マネーですが、最近は百花繚乱(ひゃっかりょうらん)の様相を呈しています。3月24日には、あの無料通話アプリ「LINE」も大手カード会社のJCBと提携し、電子マネーのように使える「LINE Payカード」のサービスをはじめました。
たいていの電子マネーには、使った額に応じてポイントがたまる仕組みがあります。イオン系で使える「WAON(ワオン)」は200円の買い物ごとに1ポイント、セブン&アイHDの「nanaco(ナナコ)」は100円ごとに1ポイント、先述のLINE Payカードは100円ごとに2ポイントもたまる仕組みになっています。使える場所やボーナスポイントなど各カードに特色があるので、電子カードに慣れていない人はまずは自分がよく使う店でどんなカードが使えるのかチェックしてみるといいでしょう。
就活でこのニュースを使うためには、電子マネーの「ビジネス」としての側面にも目を配る必要があります。直接的には「損」となるポイントをつけてでも電子マネーを使わせたい理由はどこにあるのか考えてみましょう。
イオンやセブンなどの流通業者の場合、大きなメリットのひとつはレジの混雑緩和や仕事量削減です。レジを打ち小銭を数えて渡すよりも格段に手間がはぶけ、小銭の管理も必要なくなります。人手不足に悩む小売業界にとっては見過ごせないメリットでしょう。
ではそれ以外の業者のメリットは? ひとつは「顧客の囲い込み」です。イオンやセブンなどの流通業者系電子マネーの場合、たまったポイントを使う場所は結局イオンやセブンの店となり、顧客がよその店に流れていかなくなります。楽天edyを運営する楽天は直営店を持ちませんが、この記事で指摘されているようにコンビニのサークルKサンクスやミスタードーナツなど実際の店舗で使える場所を急速に増やして「囲い込み」に乗り出しています。
そして今後注目されていくであろうもうひとつのメリットが、記事末尾で指摘されているビッグデータ活用ですね。カードのデータを分析していくと、どういう性別、年齢、職業の人がいつどこで何を買うのかという傾向が見えてきます。それを分析することで、特定の年齢や趣味をもった人を狙い撃ちにしたダイレクトメールを仕掛けたり、出店する際にどういう客がどういう商品を購入していくかについて詳細にシミュレーションすることも可能になるなど、精度の高いビジネス戦略を立てることができます。今後は、どこの事業者が有効なビッグデータをつかむかが生き残りのカギとなってくるでしょう。ビッグデータについては就活ニュースペーパーでも何度も取り上げていますので、改めてチェックしてみてください。
あるビジネスが広がる時には、必ず事業者にとっての思惑、メリットが存在します。新しいビジネスやサービスのニュースを見るときは、ぜひそれが事業者にとってどういうメリットがあるのか、考えるくせをつけてみてください。