バーミキュラ月産4000個→1万個に増強(2016年2月20日朝日新聞名古屋本社朝刊)
鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」をつくる鋳物メーカーの愛知ドビー(名古屋市)は、今秋にも生産能力を今の2.5倍の月1万個に引き上げる。口コミで人気が広がったヒット商品。今入荷は9カ月待ち。鍋とフタの隙間を100 分の1ミリ以下にして食材の水分やうまみを逃さないのが特徴。3万円前後が中心と高価格だが、販路が百貨店や家電量販店に広がり、注文が増えている。将来は生産能力を2万個程度にすることも検討している。
鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」をつくる鋳物メーカーの愛知ドビー(名古屋市)は、今秋にも生産能力を今の2.5倍の月1万個に引き上げる。口コミで人気が広がったヒット商品。今入荷は9カ月待ち。鍋とフタの隙間を100 分の1ミリ以下にして食材の水分やうまみを逃さないのが特徴。3万円前後が中心と高価格だが、販路が百貨店や家電量販店に広がり、注文が増えている。将来は生産能力を2万個程度にすることも検討している。
記事はただ「鋳物メーカーのドビー」としていますが、機械部品を鋳造、加工する精密部品メーカーです。同社のHPによれば従業員68人の中小企業。昨年の朝日新聞デジタル(2015年5月21日)の連載「ヒット!予感実感」がバーミキュラを取り上げていました。創業は1936(昭和11)年で、もともと繊維機械のメーカーでしたが日本の繊維産業の衰退とともに業績が悪化。大手の造船や建設機械メーカーの部品製造の下請けに転身したものの経営は改善しなかったといいます。そのころ為替ディーラーをしていた3代目の土方 邦裕・現社長が、当時社長だった父親から再建を手伝うよう頼まれました。それが2001年のことです。記事のなかで邦裕社長は「景気が悪くなれば仕事は減り、自分たちで価格を決めることもできない。会社として成長し続けるために、自ら商品をつくるメーカーに戻ろうと決めた」と話しています。そこで同社の強みである「鋳造と機械加工の技術」を活かせる新製品の開発を目指しました。たどりついたのが、フランス製「ル・クルーゼ」を筆頭に当時すでに人気が出ていた高級鋳物ホーロー鍋だったといいます。
一方で、「無水調理」ができる密閉性のあるステンレス製鍋も消費者から支持されていました。そこで同社は「ステンレス製鍋並みに密閉性のある鋳物ホーロー鍋の開発」を目標に掲げました。他にはない商品です。しかし、ホーローは鍋の表面にガラス質のうわぐすりを吹き付けるため、フタと本体の隙間をなくすのは至難の技だったそうです。発売にこぎつけたのは3代目が経営再建に乗り出してから10年目の2010年2月。当初は月産50個でしたが、口コミで評判が広まりに一気に300個の注文が来たりして、人気に火が着いたといいます。人気鍋増産の記事の背景には、こんな中小企業のサクセスストーリーがあったのですね。
バーミキュラは、
① 自分たちの強みを活かした
② 他にない
③ (下請け仕事でなく)自分たちに価格決定権がある
こんな3つの要素をもった愛知ドビーの救世主でした。
アクティブ・ノンアクション(不毛な多忙)ということばをご存じですか。成果を出すには、ただやみくもに努力すればよいというのではない、ということです。これって、就職活動にもあてはまるし、もちろん企業活動にとって大事な“戒め”ですね。正しい戦略、勝算のある戦術の先に栄冠は輝きます。
2024/11/11 更新
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