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2015年09月04日

コミックの老舗「書泉ブックマート」閉店は電子出版の影響?

マスコミ・出版・印刷

書泉ブックマート閉店へ(2015年9月2日朝日新聞朝刊)

 東京・神田神保町にある老舗書店「書泉ブックマート」が9月30日に閉店する。1967年に開店。コミックやライトノベルなどサブカルチャーに強く、昨秋からは女性向け作品に注力していた。

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 書泉グループは「ブックマート」のほか秋葉原店と「書泉グランデ」の都内3店舗があり、「グランデ」は「ブックマート」と交差点を挟んで斜め前にあります。一般書籍や雑誌のほか鉄道やミリタリー、スピリチュアルなどの趣味系にめっぽう強い書店として知られています。客層は「おじさん」が多いようです。記事のなかで広報担当者は「近くに書泉グランデがあり、経営を合理化するため」としていますが、品揃えはずいぶん違います。なぜ、いま閉店なのでしょう?

 背景には、若者の「紙のコミック」離れがあるようです。朝日新聞2月21日朝刊に「スマホ漫画 読者急増/無料で作品公開/老舗雑誌参入」という記事がありました。それによると、ゲーム大手DeNAが運営するスマホ向け「マンガボックス」は1週間あたりの読者数が150万人もいるとのこと。この手のコミック・アプリは、無料で読めるコミックをそろえて集客し、利用者が増えたら広告を掲載し、人気作品は単行本化したりゲームにしたりしてもうける――すでに、こんなビジネスモデルができています。同じく「LINEマンガ」は無料対話アプリの580万人もの国内登録者を武器に、今年1月末には1000万ダウンロードを突破、2年弱で49億円を売り上げたそうです。

 これまでマンガ週刊誌をドル箱としてきた大手出版社も電子化を進めています。集英社のアプリ「少年ジャンプ+」は、「ワンピース」や「ドラゴンボール」など人気作品の一部を無料で読めるようにして集客を図っています。講談社も「週刊少年マガジン」など全22コミック誌について、店での発売日と同時に電子配信する方針です。

 出版業界では、2014年度の電子書籍市場はついに1000億円を突破したとされ、そのうち8割はコミックといわれています。一方、「出版界 縮小の一途」(朝日新聞2014年6月10日朝刊)によれば、全国の書店は2013~14年にかけて298店も減り、334の自治体には新刊を扱う書店が全く無くなったといいます。みなさんがなにげなくスマホで読んでいるコミックの周りには、出版、通信、広告、流通など、さまざまな“新しいビジネス”の動きが起きているのですね。アンテナを張って世の中の動きをキャッチしてください。

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