(トップが診る)帝国ホテル・定保英弥社長 (2015年6月25日朝刊)
■若いファン、増やしたい 帝国ホテル・定保英弥社長
《東京・内幸町にある帝国ホテルは4月、タワー館の最上階の31階と30階の客室を「プレミアムタワーフロア」に改装した。1部屋5万円超の高級プランは、きめ細かな「おもてなし」が売り。最近は、若いファンづくりにも力を入れる。》
リーマン・ショックや東日本大震災によって、宿泊客の2割にまで減っていた外国人は最近、4割台まで回復しました。プレミアムタワーフロアは、美しい夜景や質の高いサービスを求める外国人客に好評です。
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先週6月26日の「業界トピックス」でもご紹介した朝日新聞経済面の連載「トップが診る」。社長の言葉をフォローすることで、一歩踏み込んだ志望動機をえがくことができます。今回はこの連載から、老舗ホテルの代表格である帝国ホテル・定保(さだやす)社長の言葉をとりあげます。
帝国ホテルは東京と大阪、長野(上高地)に3つのホテルを運営しています(「大阪帝国ホテル」という名前のホテルもありますが、別系列です)。今年開業125周年を迎える帝国ホテル東京は1泊安くみつもっても数万円、学生のみなさんにとっては簡単に泊まれるところではありませんね。ところが定保社長はこの記事で「若いファンを増やしたい」と語っています。
背景にあるのは、相次ぐ高級ホテル、とりわけ外資系高級ホテルの参入です。東京では2005年に「マンダリンオリエンタル東京」(日本橋)と「コンラッド東京」(汐留)、2007年に「ザ・ペニンシュラ東京」(有楽町)と「ザ・リッツ・カールトン東京」(六本木)が相次ぎ開業。その後も2014年虎ノ門ヒルズに米ハイアット系の「アンダーズ東京」、大手町に「アマン東京」が開業しています。2020年の東京五輪開催をひかえ、増加の一途をたどる海外客の取り込みをはかっているわけですね。
帝国ホテルは細やかな「おもてなし」を売りに対抗しています。別のインタビューで定保社長は「100室くらいのスモールラグジュアリーホテルに滞在しているような雰囲気を心がけている」と発言。宿泊部門の売上4割を占めるホテル会員に対しては、「部屋に加湿器を置いてほしい」といった要望や客の好みをデータベースで管理し次の宿泊時にあらかじめ準備しているとか。一度でいいからそういうホテルに泊まってみたいですね(涙)。
とはいえ、単純に高級化路線だけ目指していては競争も激しく、疲弊しますし市場の広がりも見込めません。そこで「(国内市場の)若いファンも増やしたい」というわけです。記事では若者向け雑誌への露出やユニバーサル・スタジオ・ジャパンと提携した宿泊プラン(帝国ホテル大阪)といった方策を紹介しており、効果が注目されますね。
高級ホテルを若者向けにアピールする方法のひとつはディスカウントですが、ただ安くするだけではホテルの売りである高級感が損なわれてしまいます。だから、チェックイン時間を遅くしたり他のサービスとあわせて売ったりするなど様々な工夫が必要なんですね。また、ホテルを舞台にしたイベントを仕掛けるという方法もあります。東京の「ヒルトン東京」では昨年から「お一人様ビアガーデン」というサービスを開始。日本のビアガーデンは敷居が高いという外国人宿泊客に売る狙いだったのですが、女性にも人気が高いそうです。
消費意欲が低いとされる若い世代にサービスをどう売り込むかはホテルに限らずどの業界でも考えておくべきトピック。帝国ホテルの例をもとに、自分の志望業界ではどんな工夫が考えられるか頭の体操をしてみましょう。